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断片とっ散らかり屋
・書いたけど本編には載らなかった断片
・書き直したため不要になった初稿
・ちょっと思い付いただけのIF
・CP妄想セルフ二次創作
など。
見あパラ多め。ネタバレ超超注意。観覧は自己責任にてお願い申し上げます。
2017.03.31(金) 00:06

どちら様、と、懐かしい声が雑踏らしきノイズに混じって聞こえた。
受話器を握る手に余計な力が入りすぎているのが自分でもわかる。冷静に、息を整えて、整えて、ひとつ小さく声を絞り出した。

「高瀬です」

少しは私だって以前より強くなっていると信じたい。声が震えることはなくて、ひそかに安堵する。

『なっ……青空……!? なしてあんた、どこにおるん?』
「大宮駅裏の路地です。今すぐ来てもらえますか。必ず、鹿俣さんを連れて」
『……何があった』
「理子さん、お亡くなりになりました」
『は、』
「自殺かと。死体は隠していません。もうじき騒ぎになるでしょうね。……では、私はこれで。もう行きますから」
『待っ、青空、いい加減に、』

さっさと通話を終了して、改めて振り返る。
じっと踞り刃物を呑んだ亡骸は存外美しかった。まだ赤く、まだ温かい。まだ、その整った顔には生気があるのだ。
言い様のない感情で涙ぐむ自分を無視して、そっと、青い前髪を払い退けて彼女の目を閉じさせる。数秒、黙祷し、踵を返すと、私は全力で嗚咽半分に作り物半分の悲鳴を上げた。そして駆け出す。一刻も早く離脱せねば、ここに居座れば、篠さんたちと鉢合わせてしまいかねないのだ。
碧さんを殺した私に、彼らに合わせる顔はない。
理子さんに合わせる顔だって、本当はなかったのだけど、……最悪の形で合わせてしまったのだから、もう仕方がなくて。

(神は死んだ、か)

なんとも、無情なことだ。
路地を駆け抜け、どことなく騒然とした駅前をそそくさと過ぎて私は適当な電車に乗り込む。
まだ手が震えている。
がたん、ごとん、あの日と同じように、無機的に、車体は揺れる。

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