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断片とっ散らかり屋
・書いたけど本編には載らなかった断片
・書き直したため不要になった初稿
・ちょっと思い付いただけのIF
・CP妄想セルフ二次創作
など。
見あパラ多め。ネタバレ超超注意。観覧は自己責任にてお願い申し上げます。
2017.03.30(木) 00:49

「偲さん。帰っていらしてたんですね」

いつものように帰宅した俺を待ち受けていたのは、数ヶ月ほど会っていないだろう父の姿だった。
どこで何をしているのか、母と共にいるのかどうかは幼い俺には推し測れもしない。ただ、どちらもこうして稀に抜き打ちで俺の様子を見に来るのだ。だから俺は常に望まれる者でなければならない。
会釈ひとつ。無反応の父に、ごゆっくりしていってくださいとだけ声をかけて洗面所へ。手洗いついでに洗濯機を回して戻ってきて、夕食の支度に取り掛かる。今日はそう手抜きな料理で済ませるわけにもいくまい。
ひとまず、米を炊いて、メニューに悩む。

「日暮」
「あ、はい。どうかなさいました?」
「学校はどうだ。友達はいるのか」

形式的で無機的な問い。

「いっぱいいます。楽しいですよ。成績はそんなによくないですが」
「何が苦手なんだ」
「英語です。もうさっぱりで」
「英語は何より重要だ。多少はできるようになれ」
「……はい、やっておきます」

これはまた、友人に協力を仰ぐしかあるまい。骨の折れそうな課題にはにかみ、短く返答する。
放任主義のくせして躾にはとことんうるさい親だ、と思わないわけではなかった。思わないわけではないのだけど、物理的な束縛は全くと言って良いほどされていないから、そこまでの不満はない。言える立場にない、と言う方が正しいだろうか。
彼らの指示をすなおに聞き入れなければ俺は生きていけないのだと思う。あらゆる意味で、俺は彼らに依存しているのだから。

「苦しいことはあるか?」

尋ねる声は無機的なれど、真摯なのだ。

「あります。幾らでも」
「解決はできそうか?」
「いずれはできたらいいな、くらいですよ」

何が苦しいのか。
それだけは問おうとしない彼に、俺は軽く肩をすくめてみせる。

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