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月夜竜


パチッ…と音を立て、囲炉裏にくべた薪が静かに燃えていた。
三人は近くにあった山小屋を借りることにした。
暫く使われてないように古びた小屋であったが雨を凌ぐには十分だった。


『千代が小十郎を此処まで連れてきてくれたんだな、ありがとな』
濡れた着物を脱いだ梵天丸は千代と並んで火にあたっていた。

礼を言われた千代は照れ臭そうに微笑み返す。

『私からも…礼を言わせていただきます、本当に感謝してます』
姿の見えぬ千代に、小十郎までもが頭を下げた。

座敷わらしは住み着いた家の災いを払い、幸運をもたらすと宗乙が話すのを聞いていた小十郎だったが、俄に信じられずにいた。

しかし今回、千代のお陰で梵天丸を見つけ出せた。
姿が見えなくても頭を下げずにはいられなかった。

『千代、小十郎も感謝してるぞ。帰ったらごほうび沢山もらえよ』

千代と梵天丸は顔を見合わせ笑った。


しかし、梵天丸の心は靄かかったように晴れ晴れとはしていなかった。
自分を助けてくれた女子
あれは誰であったのだろうか

小十郎が駆けつけた時に辺りには人の姿はなく、人が居た痕跡もなかった。

夢だったのか

虚ろな記憶
けれどあの時に感じた彼女の温もりは今もまだ残るかのように鮮明だった。



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あきゅろす。
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