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月夜竜


ショキショキショキ〜♪

小豆洗おうか人取って喰おうか〜♪

ショキショキショキ〜♪


『…変な歌』
そう思いながらも梵天丸は歌がハッキリと聞こえる所まで来ていた。

藪を掻き分け大きく一歩踏み出すと、急に視界が開けた。

大きな川だ。
川岸はごつごつとした岩だらけ。

そんな岩の上に小さな人影を見た。

禿げた頭にボロボロの服を着た小さな体、一見には初老のような姿…

おそらく、妖怪だろう。

手には桶のような物を持っている。


ショキショキショキ〜♪


梵天丸はその桶の中身が気になりそっと歩み寄った。

岩と岩の間を縫うようにすり抜け、その者が居る他より少し大きな岩をよじ登った。

そして背後から覗き込むように屈んだ、その瞬間だった。

その者が勢いよく振り返り大きな声をあげた。
『バァッ!』

『…!!』
度肝を抜かれた梵天丸は岩場から足を踏み外し、その小さな体は川へ投げ出された。
雨を集め、僅かに水位を増した急流へと。

水の中へ落ちる直前、梵天丸は見た。その者の姿を。
それは仕掛けた悪戯が成功した時の自分と重なった。

ケッケッケ…と不気味に笑いながら岩の上から梵天丸をみていた。

押し寄せる水にもがきながら流されていく梵天丸は心で呟いた。

『アイツ…覚えてろよ…』
 
もがいてももがいても、押し寄せる水の勢いに抗えず、梵天丸はどんどん下流へ流されていく。

…助けて!

この流れる川の先には滝が待ち構えていた。

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