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邑上サキヒトの場合



俺の眼前、に立ちはだかるのは、俺の家だ。
俺の家。邑上家。



主催者に言われた指示、むしろ命令はこうだ。

アトを呼び出し、「お菓子をくれないといたずらしちゃうぞ〜」と言い、お菓子をもらってくる。


やること自体はめちゃくちゃ簡単なことだ。だけど、相手がアトとなれば話は別だ。
アト以外なら、誰でも構わないんだ。アトだけには、会いたくない。会いたくないし、話したくもない。


でも、俺は主催者のナイフを思い出す。首筋に当てられた、その感触。

怖かったね、ホントに。
あれは、俺の人生において、「あ、俺死ぬな…」って思った瞬間のナンバーワンだった。


死ぬのはヤだからさ、俺はやるよ。
よくよく考えてみれば、このかぼちゃマスク被ってれば、アトも俺のこと、わかんないだろ。多分。

チャイムを鳴らす。
すると、アトが出てきた。

「はいー……って、何?」

俺の決心は固い。
言うぜ。言ってやるぜ。



「お菓子をk」
「何やってんのサキ?」


秒殺?!
なぜバレたし!?





「前からサキがおかしいのは知ってたけど、いい加減狂っちゃった?」



俺は。


俺は、俺の右手を固く、握り締めて。












アトを殴って、しまいました。

アトの頬に、俺の右拳はクリーンヒット。アトは変なうめき声を玄関に倒れこんだ。
もう知らん。お前なんか。後は母さんにでも助けてもらえ。



「お疲れ様でした」
主催者は微笑み、俺にそう言った。

ハイタッチなんてしちゃう俺と主催者だった。


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あきゅろす。
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