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とおるの場合



とおるの手の中には、先ほど主催者から渡された封筒とカードが握られていた。

書かれていた名前は、「ハヤミ」


そして、今。
とおる達は主催者の用意した車に乗り込み、そのカードに書かれた名前の者のところへ向かっていた。



(はやみくんに例の台詞を言えば、この馬鹿騒ぎも終わるんだろう)

整えられた髪が、崩れてきていた。

その前髪をもてあそびながら、「明日の仕事をどうするか」、そんなことを考えた。



車が目的地へと着く。
ここが、はやみの家なのだと言う。

車から降り、携帯を取り出し、電話を掛ける。
相手は勿論、はやみだ。



呼び出せば、その家からはやみが出てきた。
とおるの前に来て、とおるのその姿を見て、彼は笑った。

「どうしたんですか?そのカッコ。吸血鬼ですか?」
「俺だって好きでやってるんじゃない」

「今日がハロウィンだからですね」
「そうなんだろうね」
「すごく似合ってますよ」
はやみはそう言い、はにかむ。


早く終わらせてしまおう。
とおるはそう思い、主催者に言われた台詞を吐き出した。


「お菓子をくれないと、いたずらするぞ」

ああ、本当に馬鹿げてる。
とおるは自分で吐き出したその言葉に辟易した。その声はため息交じりだった。



はやみは、目を丸くし、そして頬を赤らめた。
そして俯き、言う。









とおるは、何かが弾けるのを感じた。
何が弾けたのかは、わからなかったが。





「主催者。俺はここでリタイアするぞ」
「ええ、構いません」



「はやみくん、行こうか」
とおるははやみの腕を掴み、引く。
「えっ…?ど、どこへですか?」

「聞かなくてもわかるだろう?」
とおるはの口は、三日月のようにしなった。

腕を掴む、手の力は強い。掴まれたはやみはその痛みに、顔を歪める。
離さない、逃がさない、とでも言うように。





「さて次は、一之瀬さんのところに行きましょうか?」
主催者は、車を動かした。


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