今回の子は、「はやみ」くん。17歳。
都内の普通科高校に通う、二年生男子だ。
指定の場所に現われたはやみくんは、首をあちらこちらに向けてきょろきょろし、おどおどとした様子で、こちらに声を掛けた。
「あの…、とおるさん、ですか?」
はやみくんは、今回が初めての援助交際なのだと言う。
始めの様子はそれが原因だったようだ。
「おれ、…全然どうしたらいいかわかんないんで、…とおるさんに任せますね…」
「任せてよ。嫌な思いはさせないよ、自信はあるから」
こちらがそう言うと、はやみくんはふわりと笑った。
他愛もない会話をしているうちに、はやみくんの俺に対する警戒していた雰囲気が少しずつ溶けていくのがわかった。
そこで、気になっていたことを聞いてみる。
「なんで、援助交際なんてやろうと思ったの?」
遊ぶ金欲しさ、なんていう理由では、こんなことをしそうにない子に思えたからだ。
するとはやみくんは、こう答えた。
「いまどきありがちな理由ですよ。おれの両親、離婚しちゃって」
はやみくんは寂しそうな目を遠くに向けて、続ける。
「おれは母親と一緒に住んでたんだけど、母親、最近再婚したんですよ。で、その新しいオトウサンとおれ、上手くいかなくて、家に居場所ないんです」
そう言い、はやみくんは笑った。
笑って、膝を抱えて俯き、肩を震わせた。
俺ははやみくんの肩を引き寄せて、強く抱いた。
俺に何も出来ることはないから、今日だけは、そんな日常を忘れさせてあげよう、そう思った。
「初めての相手が、とおるさんでよかったです」
俺は頷き、はやみくんの腕を取った。
「ホテル、行こうか」
一瞬体を強張らせたはやみくん。
手を優しく握ると、笑って頷いた。
「…はい」
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