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傷口



ガッ


[痛く…ッ!]



素手で作業してたせいか、金属製のカゴとカゴの間に指を思いっきり挟んで血が滲み爪が欠けた。




正直、良く喋る主任は……苦手なタイプだ…。ハッチャケというか気利が上手いというか…



真[…帰るか…秋野]


[…はい…]


グィッと突然立ち止まった前から俺の手首を掴み上げ、
人差し指に触れた。


ドクン…


[っ…!]


真[…次、直ぐ言わなかったら……先に絆創膏だな…]



主任のロッカーから絆創膏を取り出し、優しい手付きで指に触れてくる…



真[分かったな、秋野]


[すみません…]


ドクン…ドクン…ドクン
何だ、これ…



主任に触れられた指先から心臓に向かって、ドクドクと熱く感じた。





[…先輩!]


先日、久々に会ったとおもったら……相手の携帯に友達からの電話が何度もしつこいくらいに…


俺を挑発し、
思わず途中で抜け出した…
初めてだった……こんな感覚…


嫌で嫌で胸苦しい…


[アッキ!]


ビクッと眼が覚めると、俺は映画館の席に座って爆睡してたらしい…
エンディングも終わり、スタッフがゴミを集めていた。



[…悪い…]




中学の後輩からのお誘いで映画を観に…


[秋野先輩、疲れ溜まってます?なのに無理に……帰りましょう…俺の部屋に、さぁ]



[お前の仕掛けには引っかからないぞ、木田…]



正直、中学時代は丸っこり、コイツとしか絡まなかったら…兄弟みたくに可愛い後輩…だ。



なのに、つい先程の上映中、寝てる間に、俺が、男のお前に、その……



♪〜♪〜♪〜…
ドキン…


ビビった…


木[出ないんすか?てか誰ソイツ…]



[もしもしお疲れ様です…真野主任]


『真面目過ぎな秋ちゃんはモテモテ〜…ひっく…』


[あの……もしかして酔いつぶれてますか?飲めないんじゃあ……]


『たまたま奇跡的に中学時代の良き親友と再会しちゃってさぁー?つい飲まされてさぁ……というかお前、昨日〇〇講義の資料間違えて持って帰ってたりしねぇか?明日の会議で要るんだけど……』


[えっ、そうなんですか…?!す、すみませんっ…今から帰って調べて直ぐにお持ちします…っ]




[いいよ、コピーのがあるから……焦っちゃって…]


[え?]



ドクン…ッ



映画館の出入り口に、何故か話中の主任がフラフラの状態で立っていた。



真[ビクビクして可愛いなぁ…]


ガクッと真野さんが腰を抜かすようにその場にしゃがみ込んだ、身体が勝手に真野さんに近寄って…

[飲めないのに飲むから…]


真[平気平気、二日酔い長引くかなぁ…くそ……]


[木田、悪い真野さんを…]



木田が初めて黙って居なくなった、
こんな感じなんだ……あの人もホントは寂しかったのかな…多忙な毎日…



[駐車場どこ止めてるんですか…っ肩貸してください]


真[チビに支えられても俺が恥ずかしい…]


カアアァッ


真[プリクラ撮ってくれたら、大人しく帰るから…]


[ハァ…??]





変な人…

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