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雨の日は
雨の日も



「でも、俺は一時救われたんだ。」


尚希が俺を見つめる。
こんな時なのに、つい、ドキドキしてしまう。


「久志に再会できたから。」


 尚希から言われた言葉を理解できない。


「俺、中学の時から久志のことが好きだったんだ。だから会えた時は本当に嬉しかった。」


さらに理解できないことを言われた気がする。
けれど、今はとりあえず、話の続きを聞かなければいけない。


「仲良くなって、一緒にいる時間が増えて、自分の心が癒されていくのを感じたんだ。

でも俺馬鹿だから、足も治った気がして、あの日……大会の前日、全力で練習してたんだ。」


――そして、あの瞬間。
派手に転倒し、足首を完全に捻った。


「その上さ、膝も悪くしちゃって、もう陸上できないかも知れないらしいんだ。

でも、それを医者に言われた時、俺、ほっとしたんだ。もうプレッシャーを感じなくて良いんだ、無理して走らなくて良いんだって。」


――最低だろ? 俺。


そう言ってくる尚希の顔が淋しそうで、こっちが辛くなる。


「そんなこと……っ!」


「……久志はすっごく優しいから、そう言ってくれるけど、そうはいかなかったんだ。

俺の欠場で今度は部員のみんなにプレッシャーを与えてしまったらしく、うちの学校は大会で史上最低の惨敗。

その大会の次の日からだったかな。
学校の奴らからの嫌がらせが始まったのは。」




 なんでも、陸上部の惨敗が尚希に原因があるらしいということが学校中に広まり、尚希は学校中からいじめを受けた形になったらしい。
 そのため、ここ数日間は学校に行けず、絶え間ない嫌がらせのメールや電話のために携帯の電源を切っていたらしい。



「でも、今日電源を入れてびっくりした。嫌がらせのメールも山ほどあったけど、久志からのメールもたくさんあったから。」



――結局、諦めきれなくて、いっぱいメール送っちゃったんだった……恥ずかしい。



「――久志に謝りたかった。心配かけてごめん。それと、さっき話にも出しちゃったんだけど、」


――俺は久志のことが好き、です。
久志は、連絡がなくなって、俺に対してムカついているかもしれないけど、こんな事情があったんだ。
だから、どうか、嫌わないで下さい。
もし、許してくれるなら付き合おう。



 大好きな人からの真剣な告白。


答えはもちろん、決まっているよ。



だけど、お願い。



これからは、俺に早く相談してくれ。


君を一人で悩ませたくなんかないから。


俺も悩みがあったら、君にすぐ様相談するよ。


携帯もある。


でも、できれば、このバス停で。


今までは『雨の日だけ』しか会えない俺たちだったけど、これからは、



――晴れの日も、曇りの日も、雪の日も。



そして、もちろん、



――雨の日も、な!




【end】



 

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