雨の日は
急接近
あの日以来、俺と尚希は頻繁にメールのやり取りをしたり、天気予報を見て翌朝に雨が降るようなら待ち合わせをして一緒にバス通学をしたりして急激に接近していった。
そんな中でも、一番驚いたのは、
「ええっ? 尚希、彼女いないの?」
ある雨の朝、バスをバス停で待ちながら、何気なくお互いの恋愛事情を話していた時だった。
俺自身は悲しいことに、女性から見ると、印象が薄いのかまったく恋愛を予期させるものがないのが現状だ。
しかし、尚希は中学の時から何かとモテて、羨ましい限りなのだ。
そんな奴に彼女がいないなんて……!
「そんなに驚くなよ。……そういう久志は?」
「くっ、いるわけねえだろ! このイケメン野郎がっ!」
わざわざ俺なんかに聞いてくるコイツが憎い。
しかし、当の本人はそんな俺の気持ちに気付くことなく、
「えー? イケメンって照れるなあ。」
なんて言っている。
本当に憎たらしい。
「はぁ、良いよなあ。モテる奴は、いつでもチャンスあるし。」
俺がいじけて、そんなことを呟いていると、
「は? お前、中学の時結構モテてたじゃん。」
尚希が意外なことを言ってきた。
「ウソ! いつだよ?」
「いや、女子達が『久志くんて可愛いー。』『癒されるよね、付き合ったら毎日癒してくれそう。』ってよく言ってたけど?」
わざわざ女子の声マネをして教えてくれた尚希。
……知らなかった! というかそれって小動物とかに対する感情じゃ……?
そう言うと、
「そうかもなー。」
なんて気楽に返事をする尚希。
俺は心の中で叫ぶ。
誰か、このイケメン野郎を殴らせて下さい……!
しかしそんな俺に気付くことなく、尚希は更に話し続ける。
「でもさ、俺もお前といると癒される。」
悔しいことに、その一言で俺の気持ちは一気に浮上。そして顔は真っ赤になってしまう。
さらには俺をじっと見つめてくる尚希。
そして……
「……んっ! ――な、な、尚希!?」
「……ホント、お前って可愛いのな。……あ、バスやっと来た。」
そう言って、バスに乗り込む尚希。
え? 今さっき、俺のく、唇に何か触れたのは俺の気のせいなのか……!?
そうアイツの背中に問いたくても、ドキドキが治まらなくて、無理だった――。
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