セフィクラ
必需品(4)
シャワーのお湯が頭からかけられる。目にしみないようにしっかりと目を閉じる。
濡らされた髪の毛にシャンプーがつけられたのか、香りが漂ってくる。
「とりあえず、一回目」
と言って、クラウドはシャンプーを洗い流して、再度シャンプーをつけてきた。今度は念入りに地肌をマッサージするように、手を動かしている。
「かゆいところはございませんかー」
「…いや…」
「何か、美容師さんみたいでおもしろい」
クラウドは何だか一人楽しそうである。俺はシャンプーやお湯がしみないように必死で耐えているというのに。
「じゃあ、流すねー」
気合を入れて目を閉じる。シャワーの音が耳の側で響いていて、いつ目にしみるかと思ってさらに緊張してしまう。
「セフィロスー、そんなに力入れてたら、肩凝るよー」
「…そうは言われても…」
「ま、しょうがないか。気持ち悪い所とかない? なかったらリンスするね」
俺は無言でうなずいた。クラウドは俺の髪の毛にリンスを丁寧につけている。髪の毛が長いので大変な作業であるに違いない。
「…すまん、クラウド…」
申し訳ない気分になって、クラウドに謝った。
「どうして…?」
「いや、普通だったらこんな作業、お前にさせることもないはずなんだが…」
「気にしなくていいよ」
「しかし…」
「俺、今、幸せだから」
人の髪の毛洗っていて幸せって何だ?
クラウドの思考が理解できなかった。
「普通さ、人に髪の毛洗ってもらうことってないだろうし、洗ってもらおうって思うことってないだろうから、こういう機会ってないと思うんだ。たまたまセフィロスがシャンプーハットが必要な人だったけど、俺みたいな人だったら、絶対人に洗ってもらうってことがないだろ? だから、こうやって好きな人の髪の毛洗ってあげられるって幸せだなぁ、と思ったんだけどね」
「…そんなものか…?」
「俺にとってはね。好きな人のために何かしてあげられるっていうのは嬉しいよ。特に俺、セフィロスにしてあげられることってほんとに少ないからさ…」
「クラ…」
俺がクラウドの名前を呼び終わるより先に、
「リンス、つけ終わったよ。リンスは後で流すから、先に体とか洗って」
クラウドはそう言うと、俺の髪の毛を束ねてから、湯船に浸かった。
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