セフィクラ
必需品(9)
「……嫌じゃないが…」
これだけようやく言葉にできた。
「よかった、よかった。じゃあ、また洗ってあげる。これでシャンプーハットも買わずにすみそうだしね」
……そうか、事の発端は俺のシャンプーハットだったか…。
確かにシャンプーハットを買わずに済んだのはよかったのかもしれないのだが、その反面、クラウドには余計な手間をかけさせることになる。本人はうれしそうなんだが。
「そういえば、俺を待ってた理由が二つあったと言ってたが…」
「…ああ、そのことね…」
クラウドは俺の髪の毛をまだ弄っている。
「実はセフィロス、機嫌を損ねてるんじゃないかなぁ、と思って」
「俺が? どうして?」
「うーん、何か俺、一人でうれしくなって髪の毛を洗っちゃってたけど、本当によかったのかな、と思って」
「嫌だったら、初めから洗ってもらったりしないし、礼なども言わない」
「それだったらいいんだけどね。俺、セフィロスにしてあげられることが増えて浮かれてたから、セフィロスの気持ちまでちゃんと考えられてなかったかな、って反省してて、確認しようと思ってたのが、もう一つの方」
「全く、お前は気を遣いすぎる」
クラウドを思い切り抱きしめてやる。
「そうかなぁ…」
「そう。すぐ俺のことを気にする」
「それは当然だろ」
クラウドは俺の背中に腕を回して、指先を上下に滑らせている。しばらく、クラウドは黙ったまま、この動作を続けていた。
不意に指先の動きが止まる。
「…俺、セフィロスのこと、ほんとに好きだから…」
俺の胸に頭を預けるようにして、クラウドは俺にさらに寄り添ってくる。
「…好きだから…。でも、気を遣ってるんじゃないんだ、気になるんだよ」
「…クラウド…、すまんな、ありがとう」
クラウドは俺に対してできることが少ないと言っているが、実は、クラウド自身が意識せずにやっていることでも救われているのだ。たとえば、こういうやさしさなんかもそうだ。このやさしさに俺はいつも救われている気がする。
「お、お礼言われると困る…。お礼を言われるようなことじゃないし…」
「俺が言いたいんだから、言わせろ」
クラウドは恐縮したように肩をすくめた。
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