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Novel
好きなくせに馬鹿みたい

どうしてどうしてどうして。
そればかりが頭に浮かぶ。
だって彼は神の想い人であって、いやそれ以前に僕は男で、だからこんな想いを抱くのはおかしいはずなのにどうして。

嗚呼、でもどうしようもなく好きだ。
それはどんなに考えたって変わらない。
でも…彼は僕をどう思っているのだろう。
僕が近付けば嫌そうに顔を遠ざけるし最近は僕と喋るのすら避けている気がする。
涼宮さんが居る場では普通だけれど二人きりだと特に。

でもそんな嫌がる仕草さえ愛おしいなんて末期なのだろうか。
嗚呼、どうしたらこの気持ちを整理出来るのだろう。

…いっそ、伝えてしまいたい。
神や性別など関係なく、彼にとって迷惑なこの気持ちを。
今の関係を崩す事になっても伝えてしまえば楽だろうか。
このままでは彼に酷い事をしてしまいそうだ。
それならばいっそ、伝えて楽になってしまおうか。


「でもそれだけの勇気が僕にあるのだろうか…」


饒舌なふりをしているが実際僕は勇気のない臆病者で、特に恋愛関係でこんな気持ちを抱いたのは初めてだから勇気などある訳がない。

伝えたい気持ちがあるというのに伝えるだけの勇気がないなんて…。
どうして。という自問自答は既にどうしよう。に変わっているのに。

今日も明確な答えを出せずに自問自答を終える事になりそうだ。





























どうしようどうしようどうしよう。
俺は今猛烈に悩んでいる。
あいつなんていつもニヤケ面で、遠回しな言い方しかしない嫌な奴だったはずなのに。

「やっぱり好き、なんだ…」

でも性別っていう壁があって気持ちを伝えられずにいる。
俺は男を好きになる性癖の持ち主で理解されるとは到底思ってないし、女子からモテているあいつが男(ましてや俺みたいな可愛くない奴)を好きになる訳がない。

分かってるはずなのに、焦がれる気持ちは治まらない。
どうしよう。
そんな自問自答が頭の中で繰り返される。


伝えてしまえば楽だろう。
だけどそれは今の関係を崩す事になりかねない危ない選択だ。
でも今のまま、この気持ちを持ったままあいつと普通に接する事が出来るのかと聞かれれば無理だと即答する。
現に俺は二人きりになると恥ずかしくて、気持ちが悟られそうで上手く喋れないから。
このままでは嫌われてしまうかもしれない。
分かってるのに、あいつの顔を見る度可愛くない態度をとってしまう。
どうしたら良いのか。

やっぱり気持ちに片を付ける為に伝えるべきなのだろうか。


「でも、今の関係が崩れたらもう…」

側に居られなくなるかもしれない。
そう思ったのだが、ふと、汚い考えが浮かんでしまった。


ハルヒが居る手前、あいつはあらかさまに俺を避ける事は出来ないだろう。
それなら少しずつ関係を戻していけるんじゃないか、なんて。

そんな考えを浮かべてしまった頭を振るがそう考えると伝えてしまった方がどちらにせよ今より良い方向に向かえる気がしてきた。


俺の中のどうしよう。はいつの間にかそうしよう。に変わっていて、明日が来るのが楽しみなような不安なような、微妙な気持ちで眠りにつく事にした。




















朝、少し寝不足でだるい体を引きずるように学校に向かった。
…涼宮さんにこんな姿を見られたら大変だ、と分かっているのだがだるいものはだるい。
しかし少し先に彼の姿を見つけた途端、体のだるさなど忘れるくらい心臓が跳ねた。

いつもならもう少し遅い時間に行くであろう彼の背中を見る事が出来て、今日はきっと良い日だと思った。


少し早足で彼に追い付き、後ろから声を掛けてみた
突然後ろから声を掛けられて驚いたのか大袈裟な程に跳ねた彼の背中を見て思わず抱きしめたくなった。
そんな気持ちを無理矢理押し込め、笑顔を作って挨拶をする。



「おはようございます」

「っ!古泉か…おはよ」

「驚かせてしまってすみません」

「本当だぜ…」


こんな風に喋るのは久しぶりな気がする。
今日の彼は朝から機嫌が良いようで、心なしか笑顔だ。


「何か良い事でもあったんですか?」

「え、あ、まぁ…な」

照れたように笑う彼を見て愛おしく思う反面、この表情をさせているのが僕ではないという事にどうしようもなく嫉妬した。
そんな醜い感情を表に出せる訳もなく、なんとか笑顔を保った。
キョンくんは不思議そうな顔をしていたが気にしている余裕などなくて、学校に着くと、ではまた放課後に、と簡単に言ってからすぐさま自分の教室に向かった。
















自分の中で決心がついたからか朝はいつもより早く目が覚め、体も心なしか軽い。
関係が崩れる事を考えると不安ではあるがそれ以上に伝えたいという気持ちで一杯だ。
妹が起こしに来る前に居間に行き飯を食って、いつもより早く家を出た。

気持ちを伝える決心をしただけで世界がこんなにも変わって見えるなんて。
なんだか綺麗に見える。
なんて、いつからこんな女々しくなったのだろう。



いつもの坂をのぼっていると後ろから声が掛かり、声の主が古泉だとすぐに気付いた俺の体は大袈裟に揺れた。
振り向けばやっぱり古泉で、無性に嬉しかった。
それが表情に出ていたのだろう、

「何か良い事でもあったんですか?」
なんて古泉に聞かれたが、お前に会えたからだ、なんて言える訳もなくなんとかごまかした。
…恐らく少し赤くなった頬は隠せなかったと思うが。

それから何事もなく会話は進んだが、古泉がなんだか不機嫌そうな顔をしていたので不安に思った。
…気持ち、悪いのかな。

喋ってて頬染める男なんて気持ち悪いに決まってる。
証拠に、学校に着いてから古泉は逃げるように教室に行ってしまった。
悲しくなったが今更伝える事をやめるつもりはない。
今日伝えなければ決心が揺らいでしまうから。




放課後の事ばかりを考えていると一日などあっという間だった。
どうやって伝えるか、なんてのは全く考えてなかったのだが運よくハルヒ達は席を外した。
何やら買い出しに行くようで一時間は戻って来ないらしい。
この時ばかりはハルヒを神だと思ったね。

二人きりの部室。
最近ご無沙汰だったオセロを引っ張り出し、やらないかと誘った。
それが意外だったのか少し古泉は驚いていたがすぐに承諾してくれた。

…さぁ、ハルヒ達が戻ってくる前に伝えなければ。


いざ告白、となると体が震えた。
涙腺も緩んできているように感じる。
いつまで経ってもオセロに手を出さない俺を不思議に思ったのか古泉が顔を覗き込んできた。


「あの…?」

ああ、もうどうにでもなれ!
「あのさ、俺…」

「?」

声がみっともなく震えてる。
しっかりしろ、ちゃんと伝えられなければ意味がない。

「お前の事、………す…き…なんだけ、ど…」

「………え…?」


嗚呼、涙も出てきやがったちくしょう。
古泉も困ってるじゃないか。


「伝えたかっただけだから。それだけ」

どうしたら良いのか分からなくてとりあえず部室から出ようとしたのだが古泉の手によってそれは制された。


「待って、下さい」

「な、に…っ」


そのまま腕を引っ張られ、気が付けば何か暖かいものに包まれていた。
抱きしめられている、という事に気付くのに時間はかからなかった。

「な、なななな、」

「…僕も、好きです」

「う、嘘だ…!」

「本当です」

「だって、俺は男だし、可愛くないし…それに

「確かに、僕は男性を好きになった事なんて一度もありません」

「それなら、

「でも、キョンくんは違うんです…好き過ぎてどうにかなりそうだ」

「こ、いずみ…」

「僕と、お付き合いして下さい」

「俺で…良いのか?」

「キョンくんが、良いです」

「っ…ば、か…」





結局涙は止まらなくて、ハルヒ達にどう言い訳しようかと思っていると、今日はこのまま帰るとのメールが入っていてホッとした。


帰りも二人きり。
どうしよう、幸せ過ぎてまた自問自答が止まらなくなりそうだ。



なんて、好きなくせに馬鹿みたい。





End…






視点がコロコロと変わる小説にしてみたんですが…分かりづらいですね汗←
甘めに出来たので個人的には満足です^^←
ガチキョンの方が大分積極的ですな笑


それでは読んで下さった方ありがとうございました!

そしてお粗末様でした!


零紅拝

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あきゅろす。
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