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紫煙



燻らす紫煙は
あなたの居場所を知らせる狼煙



紫煙



「土方さん!」

「あん? なんだ、名か」


私は現在、土方の小姓をしている。
本来なら小姓は男しか出来ないのだが、土方が私を近くに置きたいとかいう勝手な理由で小姓になった。

土方などと心の中では呼び捨てにしてるが、別に傍にいるのが嫌な訳ではない。
寧ろ、嬉しい位だ。


ただ小姓というのが気に入らない。
別に、入れない真撰組に入りたい訳でもないし、家政婦や駒使いになりたい訳でもない。
私は彼女になりたいのだ、彼女に。
なのに、何度告白しても。

「そうか」

って、返すだけ。
まぁ、その返事をする時の真っ赤な顔を見るのも嫌いじゃないんだけど。

でも、いい加減彼女にしてくれてもいいと思う。
ってことで、今日こそはと言いに来たのだ。


「土方さん」

「ん?」


仕事の書類に目を通しながら応える土方さん。
正直、こっち向いて欲しい。


「土方さん」

「なんだ?」

「小姓じゃなくて、私を土方さんの彼女にして下さい」

「………駄目だ」

「…なんでですか?」


煙草を吹かしながら、土方さんは私に背中を向ける。
そして、徐に口を開いた。


「彼女じゃ、ずっと傍に居れねぇだろ」

「は?」

「小姓はずっと傍に居れる」

「…」

「だからだ」


背中越しに微かに見える顔を真っ赤にさせながら、土方さんは答えた。
やばい、無茶苦茶可愛い。


「っ土方! 大好きだコノヤロー!」


ムードも何もぶち壊して、私は土方さんの背中に抱きついた。
勿論、土方さんの顔は更に真っ赤で。


「ってめ! 土方ってどういうことだ!」

「んじゃ、何? トシって呼んで欲しい? それとも十四郎?」

「っな! ………トシでいい」

「トシ、大好きだぜ!」

「……………」


私がそう言うと、トシは何も言わなくなった。
その代わりに彼はずっと顔を真っ赤にして、抱きつく私の手を強く握っていた。





屯所で見える煙草の煙。
それは多分、あなたの居る場所。

あ。
あとマヨネーズ臭も。






























夢主がおしとやかにならない。
こう儚げな感じにしたいのに、気付くとがさつ系になってる。
泣きたい。
しかも、砂吐きそうな程甘い。
狼煙じゃなくてノロケだろ。



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あきゅろす。
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