Black Number 始まりの謳A 「で、今回の奴いくらくらいだった?」 賞金首の始末処理を終え振り込まれた金額をおろす為近くの政府管理局へと行って来たクロに対し期待に瞳を輝かせた陽が駆け寄りながら尋ねた。 「んー今回は小物だったからね…よーちゃんの3日分の食事代しかないよ。」 「まじかよ…あんだけ走って頑張ったのに、割りに合わねぇ!」 「それはよーちゃんが余計なことに時間掛けるからでしょうが」 支払われた賞金が労働力に相応すると思わないと陽は駄々をこねるが、クロにキッ パリと反論されてしまえば言葉を詰まらせる。 「だ、だって猫が!怪我、痛そうだったし……その…」 賞金首が潜伏している場所を突き止め油断していた所を一気に攻めるはずだった今回の作戦。比較的簡単ですぐに片が付く予定だったのだが、突入した先で陽が怪我をした猫を発見し手当をしようと時間をくった為にターゲットである賞金首を易々と逃がしてしまったのである。 そのせいで陽は町中と走り回る羽目になった。 だが、クロから言わせれば自業自得であり、文句を言われる筋合いはない。 賞金首として犯罪者とは言え、人の命を奪い生活している自分達である。猫の一匹や二匹死のうが利益になる事もなければ、わざわざ心を痛める事もない。しかし目の前の青年はその無益な猫ですら助けようとするのだ。 最悪、不意をつかれて命を落とすことさえあり得る状況で…クロは肩を落とし項垂れている陽に小さな溜息を漏らした。 「よーちゃん」 呼ばれた名前に陽の肩がビクリと揺れる。恐る恐ると言うようにクロを見あげた。 「まったく。何時までも項垂れてないで、ご飯行くんでしょ?」 クロはそれ以上陽を責めることはしなかった。自分が忘れてしまった命を愛おしむ心…賞金稼ぎとしては欠点にしかならないそれを持ち続けている陽に優しく微笑みかける。 「行くっ!腹減って死にそう」 怒られることを覚悟し全身を硬くしていた陽は、思いがけない言葉にパッと笑顔を浮かべはしゃぎだした。 そんな陽の姿に今日何度目かの溜息を付くとクロは身を返し歩き出す。 「あ、クロ待てよ!」 陽も慌てて駆け寄っていった。 …荒れ果てた世界で生きた2人の青年の物語。結末など分からない でも俺達は今此処で生きている。それが全てなんだ… 【序章 END】 [*Back] |