Black Number 共鳴、狂鳴@ ―F-TownA地区 中心部にある小さなカフェバー『グランツ』は表通りに面しているものの素朴な外観の店構えをしている。外の雑踏が聞こえない静かな店内にはクラシックが優しく響き、治安の悪いF-Town内でも数少ない癒しの空間である。 ……カラン、カラン 店主のサライは今日も通常通り店を開けた ふくよかな体つきに穏やかさの映る瞳は大いなる「母」を思わせる。 「相変わらず嫌な空だよ…今日も何も起きなきゃいいんだけどねぇ」 不意に淀んだ空を見上げサライは一人ぼやいたのだった。 -第二章- 『共鳴、狂鳴』 普段から一・二組しか客居ない店内に、今回は間が悪く面倒な組み合わせが揃ったとサライ眉を潜めた。 「ちょっと!早くどきなさいよ」 「だー、逆側に座ればいいだろ」 「良くないのよ、私はクロ様に大事な話しがあるの!あんたはあっちでマザーの料理でも食べてなさい」 「別に俺が居たって良いだろうが!勝手に話せよ」 「分からない奴ね、邪魔だって言ってるのよ!馬鹿!」 フ〜ッとお互い毛を逆立て言い合いを繰り広げている男女が一人ずつ。 カウンターに腰掛け意地でも動こうとしない赤髪の青年とその青年を引きはがそうとして居るまだ幼さが残る少女は、かれこれ数十分似たようなやり取りを繰り返していた。 「ちょっとクロ…この二人何とかしてくれないかい」 サライは自分が原因で起こっている押し問答を全く気にしておらず悠長にカフェオレを飲んでいるクロにゲッソリした様子で話し掛けた。 「そうだねぇ…よーちゃん。好きなモノ食べて良いから少しだけあっちに座ってて」 通常、有無を言わさず陽が最優先なクロであるが、今回は結局陽が諌められる羽目になった。 「なっ…わかったよ…居なくなれば良いんだろ!居ないなれば」 まさか自分が怒られるとは思っていなかった陽はブスッと頬を膨らませ奥の席へ消えて行いった。 やれやれ…とクロは内心苦笑する。先程まで陽の座っていた席には既にリンが腰を降ろしているのだった。 「さて、煩いのも居なくなったしお話しましょうクロ様」 いつの間にか店内には静かなクラシックではなく、陽気なジャズが流れていた。 ―…一緒に居ることに慣れていた。 君がオレから離れるなんて考えてなかったんだよ…。ねぇ…陽… |