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Black Number
狂った世界。狂った僕等。E
なんか、めんどくさい…と陽が眉を寄せたまま呟いた。

「搬入ゲート付近は扉自体は一番頑丈に出来てるけど、監視カメラは他のゲートに比べて少ないの、だからそこから敷地内に入ろうか。」
「りょーかい」
陽は説明を一通り頭に入れ間延びした返事を返しつつクロと共に搬入ゲート付近へと走った。
クロの言う通り搬入ゲート付近はその他の場所と比べ監視用のカメラが少なく死角も多い。二人は出来るだけ音を立てないように鉄格子を越える。
「よっと、お待たせ。よーちゃん」
「よし、じゃ行くか!」
「…静かにね」
「……ゔ…」
軽々柵を飛び越えた陽に少し遅れる形でクロも敷地内の庭に入った。思わずいつも通りに声を出した陽を呆れつつ諌めれば、しまった…と慌てて口を両手で塞ぐ。
子供のような仕種に思わず口元を緩ませながら、クロは辺りに視線を巡らせた。








二人が足を踏み入れた庭には無造作に延ばされた草木が生い茂り、一面の深緑。時折吹く風に葉を揺らす木々からは遮られていた日の光がほろほろと根本の緑に降り注いでいた。
薄暗い負の気配を放っているこの美術館においてそこは唯一生命を感じられる場所。

しかし、そんな空間には目もくれず、先程までとは正反対に無表情で唯一転を見つめる陽の姿にクロは苦笑を漏らす。
陽が見つめる先…―
とぐろを巻く一匹の蛇……そしてその口に半分ほど納まった多分カエルであったろう赤緑の物体。
陽はその様子をじっと見詰めていた。

「ほら、いくよ?よーちゃん。」
「ぁ…おう!」

いつもの様に声を掛け、光が反射し綺麗に輝く赤をぽむっ撫でてやれば、陽はパッと表情が戻り無邪気に笑顔を浮かべる。
そして何もなかった様に進み出した。

搬入ゲートは分厚い扉で締め切られていた為二人は近くの換気孔から美術館内に進入する。
狭い換気通路を腹這いで進むと中程にある資料室らしき部屋へと出た。
……人気はなく数万冊に及ぶであろう冊子が散乱している室内は独特の埃臭さが充満している。その匂いに眉を寄せながら陽が呟いた。

「げほっ…うわ、真っ白」
腹這いで進んだ為埃まみれになった服を払く
「無事潜入できたから文句言わないの」

同じく埃を払いながらクロが答えた。室内を一見し監視カメラがないことを確認すれば通路側の扉へと近寄った。
「一先ず、潜入は成功。さて内装は大まかにしか聞いてないから…モニターがある管理室を目指しながら慎重に進むと…」
「クロ!」
扉に耳を当て近くに物音がしないことを確認しつつこの先の作戦を考えるクロに、陽が叫ぶように声を掛けた。
「…陽。さっき静かにって言わなかったけ?」
自分の注意を全く聞いていなかったのかと額に青筋が浮かびそうになるのを必死に堪え、圧し殺した声で陽に話しかけるクロ。しかしそんなクロに動じることなく陽が嬉々と一枚の紙を広げて見せる。
「陽ちゃんそれ…」
「なんか見つけた、使えるだろ。これ」
陽が見せたもの、それは美術館として機能していた時代使われたであろう細かく描かれた内装の絵に展示物や部屋の情報が乗ったパンフレットだった。
部屋の用途は変わっていても、大まかな設計を変える力は賞金首には無いであろうとクロは確信すると陽に対する怒りはなくなり、小さく笑って見せる。
「良くできました。さて今居るところは…」


二人はパンフレットを眺め、そして同時に口端を吊り上げた。搬入口近くの資料室、今二人の要る位置は管理室まで一直線だったのである。
クロは直ぐ様扉に近づきドアノブに手をかける。
「よーちゃん、この部屋出たら奥まで一気に突っ切るからね?」
「おう!走るの本気で良いのか?……クロついて来れる?」
「………ブチ抜かれたい?」
「…あ、いや……すみません。何でもないです」

陽の言葉に、背後にどす黒いオーラを放ち愛銃に手を掛けながらクロは優しく呟いた。


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あきゅろす。
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