[携帯モード] [URL送信]
17




最後にグシャグシャって撫でてから、屈んでた体を戻すとジィーッと見つめられている視線に気付いた

前を向くと、羨ましそうな目をしているユーキと目があった


僕は、ちょっと困った様に微笑んで



「羨ましいの?」



意地悪な質問をしてみた


ユーキは僕の言葉にびっくりしたみたいに目を見開いて、何か言おうとしたけどそれは言葉にならずに掠れて少し空気を震わしただけ

下からは非難するように、ベルが鼻をならした


だけど、僕はユーキの答えを待つ
ジッと目を逸らさずに、答えを求める為に見続ける



「――僕、は…僕は……」



パクパクと無意味に口を開いたり閉じたりした後、ユーキは掠れた声で言葉を紡ぎ出そうとした
手をギュッと握っていて、恐がってるは明らか


それでも僕は聞きたいんだ


ユーキが今、何を思っているかを



ユーキの掠れて酷く聞き取りずらい声に、僕はジッと耳を澄ました





「―――しい、羨ましい…です……ッ
だって、寂しいからッ
僕は此処に一人ぼっちで…、誰にも会えないッ
寂しい、寂しいよぉ…、お父さん…ッ」

「そうだね。
ユーキ、此処で一人ぼっちだもんね。
僕とベルが羨ましいんだよね」


ベルを見てニコッと笑うと、ベルは照れたみたいにフイッて顔を背けちゃった

恥ずかしがり屋だな、ベルは


また視線をユーキに戻すと、大きな瞳から涙をボロボロと零して必死に頷いてた

涙は寂しさを少しでも忘れる為みたいに、瞳の奥から次々と溢れ…零れて行く


ひとしきり泣ききると、真っ白なシャツの袖で涙を拭い、ユーキは笑った


嬉しそうに声を弾まして




「でも、大丈夫ですよ。
だって、もうすぐ僕を迎えに行きてくれますから」

「お父さんが?」

「はいッ
この春が終わったら、また一緒に暮らせるんです。
一緒に桜を見に行こうって約束したんです」

「そっか、それは楽しそうだね」


本当に楽しそうに言うユーキはキラキラと希望で輝いてた

だから僕は…叶えば、良いのにねって小さく小さく言うしかなかったんだ


もう少しで冬は終わるけど、ユーキにとっての冬の終わりが良いものであって欲しいと切に願うよ

春は始まりの日だから












[*前へ][次へ#]

17/65ページ

[戻る]


第3回BLove小説漫画コンテスト開催中
[小説ナビ|小説大賞]
無料HPエムペ!