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Novel〜他〜
12



「すみません。今日は何も用意してなくって、えっと、
とりあえず枝豆でいいですか?」

「お、いいな枝豆!俺もさ、ここにくる途中でちょっと買ってきたから、そんなに気にするなよ」

上がりこんだ明伸はソファにどっかりと座り、もっていた袋からガサガサとビールの6缶入りを取り出す。

剣よりも酒に弱い隼は「自分も呑まなくてはいけないのだろうか?」と不安になりながら、ひとまず冷凍庫に仕舞ってある枝豆を取り出して解凍し始めた。





「乾杯」

「、乾杯」

せっかくだからとビールをグラスに注いで、テーブルを挟んで向かい合わせに座り、グラスをぶつける。

グビグビと喉を鳴らして美味そうに呑む明伸とは対照的に、隼はちびちびとグラスを傾ける。

「あんまりビール、得意じゃない?」

「はい。すみません」

「謝るなって。じゃあ、そうだな。こんなの買ってみたけど呑むか?」

そういってビールが出てきた袋と同じものから明伸が取り出したのは、酎ハイだった。

会社の飲み会でさんざん「三枝はビールや焼酎よりよっぽどこっちが似合うな!」と上司にからかわれたこともある。
だからちょっとは呑んだこともあった。

「あ、これなら大丈夫かも・・・」

「よかった。俺こういうの呑まないから試しに買ったんだけど。
なら隼はこっちな」

反応を示した隼に、明伸は嬉しそうに笑って、たった今空っぽにした自分のグラスに酎ハイをトプトプと注いだ。

「ほら、隼のビールは俺が呑むから。はいこれ」

片手には酎ハイの入った元明伸のグラス。
もう片方はほとんど減っていない隼のグラスに伸びてくる。

「あ、ありがとうございます」

慌てて自分のグラスを明伸の手に渡し、差し出されたグラスを受け取った。

「俺甘いの苦手だから、酎ハイって駄目なんだよなぁ」

そういいながら明伸はすでに隼の残りを半分も飲み干している。
相変わらずよく呑むなぁと感心しながら、隼はキッチンから「チン」と小気味よい音が鳴ったのに気付いた。

枝豆の解凍が終わったのだ。

すっと席を立ち、明伸に断ってキッチンへ向かう。

三枝宅のキッチンはリビングからは少し見通しが悪く作られており、彼が枝豆をレンジから出し、さらに盛り付けなおす間、明伸は一人で飲んでいた。

「お待たせしました」

はい。と出来合いのもので悪いがテーブルに出す。今日食料を買いにいこうと思っていたので冷蔵庫にはほとんど食材がないのだ。しかたがない。

明伸はすでに3本目のビールを開けていて、隼も座りなおして自分のグラスを取った。

グビっと思い切って一口飲む。
味はレモンで、ちょうどいい酸っぱさが美味しかった。

「どう?大丈夫か?」

「はい!これなら」

思いがけないおいしさに、つい返事も大きくなる。すると明伸は嬉しそうに笑って、早速枝豆に手を伸ばした。




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