Novel〜他〜
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その日も、浩一と巌は一緒に下校しなかった。いままで自然と帰りは一緒だったのに、部活が終わると巌はさっさと着替えて帰ってしまう。
「今日は、さすがに言いすぎたかな・・・」
ひとりの帰り道。ぽつんと呟いた声はなぜかすごく寂しそうで驚く。
巌がいないから・・・?いつもはうるさいくらいに思っているのに?と自問して、ため息をついた。
実際寂しいのだ。巌の調子が悪いように、浩一だって調子は抜群に悪い。
ただそれを見せる場面が巌に比べると少なく、また浩一自身が必死に隠そうとしているせいもあって、わからないだけだ。
今日のことは浩一が悪かったと思う。
たぶん巌もイライラしていたのだ。返事を待つといいながら、なかなか返事をしない浩一に焦れて、その浩一が高橋となにやら真剣な話をしていたから。
それをわかってやれずに大声を出した。
今思えば隠さずに話しても良かった内容だったようにも、思える。
「謝っとこうかなぁ・・・」
呟きながら、学校では電源を切っている携帯を鞄から取り出した。
メール機能を立ち上げて・・・、しかし何を打てばいいかわからなくて、迷った末、結局諦めてしまう。
そして浩一は少し歩調を速めながら、思った。
(今週末までに、返事、しよう)
次の日、体育館で会った巌の顔は酷いというものではなかった。
「絶不調」と顔にデカデカと書かれているような顔をしている彼を、先輩同級生、もちろん後輩も遠巻きに見ている。
高橋に視線を送られて、浩一も「これは本当にヤバい」と冷や汗だ。
しかし巌は部活をやるといって聞かなかった。
監督、部長が何をいっても「やります」の一点張り。
とうとう年上が根負けしてしまった。
―あの時縛ってでも止めておけばよかった。
浩一をはじめ、その場にいた誰もが思っても、もう遅い
油断していた巌は見事に顔面でパスを受け、倒れたまま動かなくなってしまった。
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