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Novel〜他〜
9☆




面白いようにストンと落っこちた青年は、待ち構えていた触手を再び飲み込み、悲鳴を上げながら吐精した。
丸い、触手の檻から、まっ白い足が二本伸びて、ばたばたと空を切る。こらえきれずに魔王はクツクツと笑った。


「さぁ、もっと見せるがいい。我を楽しませろ」

「も、お願…っ、許し、て」

この時間の終わりが、まったく見えないことに怯えて、勇者と崇められてきた青年が勇者の証と言われる金の目を潤ませて弱弱しく懇願する。

再び玉座から降り立った魔王は、触手の檻の前まで歩き、震える青年を恍惚とも見える顔で見た。


「我は、いつか滅びる」

カチカチ、と青年の歯が鳴る音が聞こえそうな距離で、魔王は囁く。

「魔王とはそういう運命だ。お前の何度目か後の勇者によって、我は滅ぼされる。

だが知っているか?そもそも、人間どもの悪意のよどみから生まれたのが我だ。


人間が、我を産んだのだ。

人間どもの悪意には際限がない。魔王は勇者によって殺され、また悪意のよどみより、新たな魔王が生まれる」

それなら、と魔王はうっとりと笑った。


「しばらく遊んでも、いいだろう…?」






何十年後か、何百年後に魔王は滅ぼされた。

勇者の証と崇められている金の目を持つ勇者によって。



魔王の玉座の横には、

すでに肉も、目玉もない、誰のものかわからない頭蓋が、静かに魔王の最期を看取っていた。




〜END〜


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あきゅろす。
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