Novel〜他〜 白兎と茶兎。 ★ある日の リーダーとノオ★ 本来の姿である茶色い兎の姿で草を食べながら、リーダーはちらりと斜め前をみた。 視線の先にはこちらに背、もとい尻尾を向けて、一心不乱に草を食む白兎、ノオがいる。 前は、嫌いではないのだけれど「ちょっと」苛めてやりたい相手であった彼には最近恋人ができた。 名はツェス、本来の姿はライオンである。 はぁ、とため息を吐く。いまさらほのかな恋心を自覚したとして、彼らの間に割って入るような年でもないし、そのような体力もない。 ここは大人らしく、彼らを見守ろうと決めたリーダーだった。 しかし、そのことはそれでいいとして、どうしても今日はノオに一言いいたいことが彼にはあった。 『シンガリ、』 食べるのを一度やめて目的の兎を呼ぶ。 不完全な耳をピク、とこちらに向けたノオは、すぐにやってきた。 『はい。なんですかリーダー?』 ピコと首を傾げる白兎にちょっとだけきゅんとしつつ、顔には出さないようにしながら、咳払いをひとつ。 『お前昨日、どこにいっていた?』 『え?えと・・・ツェスとたんぽぽ畑へ・・・』 思っていた通りの答えにうむうむとうなずく。 『いいかノオ、あのあたりはそんなに近づくんじゃない』 ノオがなんで?とますます首を傾げる。 そこでよし、とリーダーは用意してきた言葉を言った。 『あのあたりは恐ろしい動物がでることで有名なのだ。 ・・・いや、もしかしたら動物でもないのかもしれん』 もちろん嘘だ。 すべては以後、自分の住処が地下にあるたんぽぽ畑で、またノオとツェスがいちゃんいちゃんしないようにさせるため。 付き合うことは寛容に許したが、できれば場所も考えて欲しいとの、リーダーの心遣いだった。 ノオはオバケや怪談などの類が大の苦手で、きっとこの話を聞けばもうたんぽぽ畑には近づかないだろうと、我ながらいい案を考えたと自分を誉めたくなる。 案の定、ノオは体を縮こませ・・・、 てはいなかった。 『大丈夫でしたよリーダー!なんにもでませんでしたから心配要りません』 ウフフと楽しそうに笑う白兎に、リーダーは呆気に取られてぽかんと見つめる。 さらには、 『リーダーでもそういう話、信じちゃうんですね 可愛い』 可愛いとまで言われてしまい、ぎゃふんとなる。 なんとか弁解しようと試みたが、ノオは「じゃあ僕はノオのご飯を捕りに行ってきます! 」と鼻歌でも歌い出しそうなくらいご機嫌で、どこかに行ってしまった。 そして恐れていたとおり、再びたんぽぽ畑にやってきた彼らのいちゃんいちゃんの音に、一晩付き合わされる破目になってしまう 哀れな茶兎なのだった。 ★おしまい★ 11代目拍手小話。 個人的にリーダーが好きです。 ちなみにリーダーは奥さんがいたけど先立たれて今は一人暮らし、みたいな設定を考えていました |