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Novel〜孕〜




先程、追いつかれた際に右足を噛まれ、速度は格段に落ちたはずなのに、獣たちはまだ追いかけっこを楽しむつもりらしい。同じ距離を保ちながらユキの後を追い続ける。

馬鹿にされていることが頭にくるが、自分にはどうすることもできない。
闇雲に走ったせいで帰り道もすっかりわからない状態だった。


「っあ・・・!!」

道なき道を逃げ回っていたユキは、ザザっと足を滑らせながら立ち止まる。



目の前を、小さな谷が彼の行く手を阻んでいた。

両足とも無事で、なおかつ普段の余裕があったなら、迷わずここを飛び越えただろう。

しかし、仲間を失い、右足を負傷し、さんざん獣たちに追い掛け回された彼にはもう、飛び越えようという考えすら思い浮かべることが出来なかった。

荒く息をつきながら、後ろを振り向く。

獣たちも、そろそろこの遊びに飽きてきたらしく、じりじりとユキとの間を詰めてくる。



―もう、ここまでか・・・。

剣を扱う彼は多少の怪我や痛みには慣れている。しかしそんな彼でも「死ぬほどの痛み」は想像が出来なかった。

だがもう逃げられない。ユキは先ほどまで、必死に走っていた表情とは正反対の、感情の欠落した顔で、ぼんやりと獣たちを眺めていた。





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あきゅろす。
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