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Novel〜孕〜
10





「ろ、ロウ…?」

部屋に取り残されたハクは、呆然としながら、のろのろと体を起こした。
小さく名前を呼んでみる。しかしそれに対しての返事はない。自分の部屋なのに出て行ってしまった。

「んっ」

引かない熱に体が震える。性に対してまだまだ初心なハクはどうすればいいのかわからなかった。
掴まれていた太ももと、異様に執着していた後ろがじくじくと熱い。

小さいながらに自己主張するそれを困ったように見て、恐る恐る指先で触ってみる。
とたんにビリリと何かが駆け抜けて、怖くなった。

このまま触っていたら、熔けてしまうのでないかと思ったのだ。

「ふぇ、ロウ…」

いつまでも帰ってこないロウを、しばらく泣きながら待っていたハクだったが、まるで時計がいじわるしているかのように時間が経つのが遅くて仕方がない。

そこでハクは、どうにかこの体の熱を引かせようと起き上がり、勝手ながらロウの部屋から続いている簡易の浴室に足を運んで、水を浴びることにした。

冷たい水は火照った体に心地よく、いつしかハクはジャブジャブと頭から水を被る。

その甲斐あってか、だんだんと体の熱は治まりハクはほっと息を吐いた。




浴室から出て、もしかしてロウが帰ってきているのではと見回してみるが、やはりそこには見たかった若獅子はいない。
おざなりに拭いた髪から、冷たい滴をポタポタ落としながら、さきほど自分で脱いだ服を着て、そっと退室した。

とぼとぼと帰りながら、ロウの言っていた言葉の意味を考える。「ない」とはどういう意味なのか。
隙間のことを知らないハクだったが、自分に何かが足らないことが、ロウにとって良くないことなのだと、あの顔を見てわかった。そのことが重く、ハクの胸を苦しくさせる。


「おかえりハク。え?髪どうしたの?」

「…僕、ちょっと寝るね」

「でも、少し乾かさないと」

出迎えたチュヤが、不自然に濡れているハクの髪を見て驚きながら駆け寄ってくる。
しかしそれを遮って、ハクはシーツが濡れるのも構わずにベッドにもぐりこんだ。





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あきゅろす。
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