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Novel〜孕〜
15




クエナの懇願に、獣王は「お前が隊長だったか」と呟いた。
尚も、クエナは必死に、先ほどまでは彼の首を絞めようとしていた手で、獣王の服を握り締めながら頼む。

「お願いです・・・まだこの者たちは新人なのです・・・。
今回が初めての戦いで、

誰も・・・、誰も敵を殺せるような度胸は持っていません

お願いです、どうか・・・」

ガクガクと死の恐怖に震える体からは想像できないほど、クエナの目は生きていた。
てっきり命乞いをすると思っていた人間が、まさか他の者の心配をする余裕があるとは想像しておらず、獣王はしばらく黙ってその人間の目を見つめる。

そして、クエナを見る目が、すっと細められた。それは嘲笑のようにも、愛おしいものをみているようでもあったが、どちらかなのかは、誰にもわからなかった。


「いいだろう。他の人間たちは無事に祖国に帰してやる」

その言葉に、ほっとクエナが息を吐き、笑みを浮かべる。自分の命と引き換えに、こんなにたくさんの、これから国を支える若い命を救うことができたと思うと、こんな幸せな死に方はそんなにないだろうとも感じた。

「ただし、」

しかし獣王の言葉で、閉じようとしていた目をもう一度開けるはめになる。
クエナの、いよいよ焦点が合わなくなってきた視界に入ってきたのは、

笑う、王者の顔だった。


「お前の体と、その魂は、

俺にすべて捧げると誓え。


そうしたら、他の者たちは助けてやろう」




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