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Novel〜孕〜
14





ウナの滞在に城は歓喜し、新しい仕事として、彼に王子の付き人を任命した。

王子との、その後の進展を期待されていることをひしひしと伝える仕事だったが、今は新しい仕事を覚えることと、自分の体についてちゃんと知ることの方にウナは忙しい。

ウナの体のことは、医者や学者だったらしい初老たちとは違う、メジョという少し太った助産婦が調べることになった。彼女は普段は城下で病院を営んでおり、ウナの話も親身になって聞いてくれる優しい婦人だ。

ちなみに、初めてウナが下半身を診せた時、彼女は「なかなか立派なモノがついてるじゃないか」と女性の事には触れずに、バシンとウナの背を思い切り叩いて、ウナとタクルをぽかんとさせた、なかなか豪快な女性である。


「タクル様、今日のお召し物はこちらでよろしいですか?」

毎日の服は、ウナが決める。衣装箪笥が部屋一つ分ということは、ウナを大いに驚かせたが、毎朝宝探しをするように彼の服を決めるのはひそかな楽しみになっていた。

「ああ。構わないよ

ウナは装飾の派手なものを選ばないから、助かる」

以前は、使用人の女性が服を決めて運んでいたらしい。やたらときらきらしゃらしゃらしたものを選んでくるが、わがままを言うのも気が引けて、何も言わずに袖を通していたのだと苦笑しながら教えてくれた。

タクルから貰う賛辞は、ウナを大いに照れさせた。くせ者から守ったときのようにひっくり返るということはなくなったが、たまにくらくらしてしまう。


ヤヒトが率いる、ウナの所属していた隊はここからそれほど遠くないところへ派遣された。ウナにもしものときがあればヤヒトが駆け付けられるよう、タクルが手配したのだという。

ばたばたと時が過ぎ、1月が経とうとしていた。





「あの、タクル様…」

いつになく弱弱しい声で、夜着に着替えたタクルにウナが近寄った。
傍に寄らせると、彼は明日は休ませてほしいと頼んできた。

どうした、と尋ねそうになって、王子はそろそろ、彼にとっては2度目の、月のものがやってくる時期なのだと気付く。

「ああ、ゆっくり休みなさい

私のことは気にするな」

「すみません…」

ますます小さくなるウナが気の毒で、タクルは無意識に彼の肩を抱き寄せた。
驚いているウナの背をぽんぽんと叩く。今までに感じたことのない感情にタクルは目覚めつつあった。
これを庇護欲というのだろうか、とぼんやり考えながら、おやすみ、と囁いてウナを解放した。



メジョの言った通り、翌日ウナは二度目のそれを迎えた。
朝からきてくれた彼女は、彼の腰に温かいタオルを当てて、まるで風邪をひいた子供のように顔を火照らせているウナの頭を撫でる。

「皆、こんなに痛いのを毎月我慢しているんですか?」

すごいや、と潤んだ目で尋ねるウナに、人それぞれさね。と返しながら、体を温める茶を入れる。

ウナの女性の部分は、まだまだ未発達だった。身長が伸びたのと同じように、急に体の内側も発育したらしいが、ウナの穴は幼女のように小さく、おそらくその為に酷い痛みを伴うのだろう、というのがメジョの診断だった。

「うっ…」

ウナが歯を食いしばる。まだ、流れる血の感覚に慣れないらしい。兵士の中でも強いと言われる彼が、女であれば毎月平然と迎えていることに、震えながら耐えている。

メジョはそれを口には出さず、そっと背を撫でてやった。

「メジョさん…、」

「うん?」

「俺、やっぱり、タクル様の嫁に…なるのかな?」

この時期に、不安定になる女性は多い。ウナも見事にそうで、震えるため息を吐きだした。

「赤ちゃんとか…、産まなきゃいけないのかなぁ…?」

ぽろ、と堪え切れない涙が零れる。鼻紙を渡しながら、メジョは「どうかねぇ」とゆっくりした調子で話した。

「タクル王子は、嫌いかい?」

「すごく、尊敬してる…。あんなに、優しくて強い王子はきっといないよ。」

ウナが生粋の女性であったなら、タクルによろこんで身を差し出しただろう。しかしウナにそんな心構えはなかった。憧れの人として、遠くから見ていられるだけで幸せだったのだ。

俺が言いたいのはそういうことじゃなくて、とウナが思っていると。

「じゃあ、ウナは…、あの方が無理矢理お前を孕ませるようなことをすると思う?」

「そ、そんなこと!するはずない!」

思わず飛び起きて、再びへにゃとベッドに崩れた。

「しない。絶対にしない」

「そういうことさね、ウナ」

ん?と顔を向けるウナを見下ろしながら、メジョは皺を作りながらニコリと笑う。

「ゆっくりでいいのさ。あの方は初め、キイロがいなくても国は自分で治めると言ったんだろう?

それなら、信じておやり」

信じる、と小さく呟いた彼に、そうそう、と頷いて、

「もしも、アンタたちが想い合って、ひとつになりたいと思った時は、自然とそうなるものだよ

王も、大臣も、医者も、私も、だぁれも口を挟めやしない。国も関係ない。そういうもんさ」

眠くなってきたのか、うとうととウナの目が閉じかかる。眠りに落ちる寸前、ウナはうっすらと目を開けて微笑んだ。

「そ、だね」

そうなるかはわからないが、確信めいた予感が、メジョにはある。
眠ってしまった青年に、「娘が増えた気分だねぇ」と呟いて、婦人はクスクスと笑った。








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あきゅろす。
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