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Novel〜孕〜




「誰かひとり出て来い
遊ぼうぜ」

夕方、見張りを含めた獣人が数名、牢屋の前に現れてそういった。
ニヤニヤと笑う顔から、親切な匂いは感じられない。出たらろくなことにならないのは明白だろう。

名乗り出るものなどいるはずもなく、クエナですら「ただの冗談であってほしい」と思っていると、痺れを切らしたらしい獣人が扉に近づいてきた。

「じゃあ俺から指名してやる。おいそこのお前!」

ビクっと飛び上がらんばかりに驚く隊員に「そうだお前だ。こっちにこい!」と獣人は催促する。

ガタガタ震える隊員に、早くしろと口々に獣人たちが寄ってきて、ガチャリと扉が開くと、3人の獣人が中に入ってきた。指名された隊員にズカズカと近寄り、その腕を取る。

その隊員はこの中で一番小柄な男だった。触られた瞬間「ひぃ!」と悲鳴をあげる彼に、堪らずにクエナは声を上げる。

「やめろ!」

ああ?と獣人がこちらを見る。頭は耳の尖った犬系の動物らしかった。
牙を遠慮なく見せる獣人に、怯むなと自分を叱咤して、立ち上がる。

「・・・私にしろ」

全員の目がこちらに向いている。犬頭はクエナの頭からつま先まで舐めるように見て、ふん、と鼻を鳴らした。

「確かお前が隊長だったな。間抜けにも俺らが襲撃したときに眠りこけてたっていう」

どっと、笑い声が獣人側からあがる。
怒りが湧くがそれを堪え、クエナは自ら隊員の腕を掴んでいる獣人に近づいた。

「ああそうだ。捕まったのもすべて私の責任。好きにすればいい。

ただし他の隊員には手を出すな」

「人間が俺たちに指図してんじゃねぇ!

ならお前が『どうか他のやつと替わってくれ』と泣きつくくらい相手してやるよ!
来い」

獣人の爪の長い手が、隊員の腕から離れて扉に戻っていく。
付き添って入ってきた獣人もその後に続いた。

「た、隊長・・・」

チュヤが心配そうにクエナを見上げる。
クエナは困ったように笑い、牢屋の外に出た。





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