Novel〜孕〜 赤国へ ★ 意外なことにアースはユースほどゴネなかった。 期待を込めて、ユースが「ムラサまで赤国に行くと言い出した」と伝えると、彼女は「仕様がないわね」と呆れたように笑ったのだ。 いいのか、と聞くとアースは 「なんだか、そんな気がしてたの… あの人も、自分に出来ることはないかって、いつも悩んでたみたいだったから」 部隊長の任を降りて2年近く経とうとしている。デアンもおかしなことは控えているようだったので、そろそろ何か行動をしたいのではと思っていたのだ。 「もしかしたら殺されてしまうかもしれないんだぞ…?平気なのか?」 ユースはじりじりしてそう言った。ひとりでも味方が欲しい気分なのだろう。 「もちろん嫌よ。傍にいてほしいわ。 でも、ムラサを信じようと思う…。生きて帰るって言ったんでしょ?」 「そうだけど…」 「ユース。私もカイの笑った顔を見てみたい… 幸せな気持ちにさせてあげたい。 カイがこれだけ深く愛した人だもの。今でも、きっとカイへの気持ちは変わっていないと思うわ だから早くハルさんに、カイが生きてるってことを知らせてあげたいって思うの」 その気持ちはユースにももちろんあった。しかし過保護な面がある彼はヒチが敵地へ乗り込むことが、心配で堪らないのだ。 彼の気持ちがわからないでもないが、それでもアースは自分の意思を伝えるように、ユースの手をぎゅっと握った。 「信じよう?ヒチとムラサを」 「…うん」 ★ [次へ#] [戻る] |