Novel〜孕〜 12 ★ しかし、 「何をいっているんだ!」 「この場所は、ずっと俺たちが暮らしてきた場所だ。今さら、捨てていくなんて…」 「新しい土地を探すより、ここにいたほうがきっと安全だ!」 答えは、ヒダリと一緒だった。とうとう、「早くハヅキを産んで、よそ者は出て行ってくれ!」とまで言われ、ヒダリは慌てて平太を家へ連れて帰った。 「ごめん…、俺」 家に到着して、平太は息を切らせながらヒダリに謝った。その途端に涙が零れる。 「平太さん」 様つけはやめてくれと頼まれたヒダリが、平太の体を支えながら椅子に座らせる。 「謝るのは私のほうです。平太さんが、そんなにハヅキ様と我々のことを、考えてくださっていると思っておりませんでした」 「ハヅキの声が、聞こえたんだ… もう自分のために翼竜が死ぬなら、滅んでしまえばいいって 皆、自分を置いて逝ってしまうって… それなら、って思って俺…」 嗚咽まじりの平太の言葉に、ヒダリは考え込むように目を伏せる。 「確かに、平太さんの言うとおり、空を飛んでこその翼竜です… 今日はあまりに突然だったので、皆もああいってしまいましたが、時間をかければ、考えが変わるかもしれません」 「ヒダリ…」 顔を上げた平太に、ヒダリは力強く頷いた。 「任せてください。これでも、ハヅキ様の第一の側近なのですよ。私たちは」 ★ [*前へ][次へ#] [戻る] |