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Novel〜孕〜
15



ある日、ワサビが部屋でぐったりとしていると、窓の外で物音がしました。
何だろうと思い、しばらく見つめますが、それ以来音がしません。不思議に思ってそっと窓を開けてみると、そばに何かが置かれているのに気付きました。

葉っぱです。
それはお湯に浮かべて飲めば、気分がすっきりする薬草でした。

ワサビは、子供たちの誰かが、アグラに自分の様子を聞いて摘んできてくれたのだろうと思いました。
子供たちには会いたいのですが、この気分の悪さと、そしてこれから自分も魔物の子供を生むのだと思うと、どうしても会えなかったのです。

子供たちの優しさに、ワサビは久しぶりに暖かな気持ちになりました。
そしてその薬草を大事に持って、部屋に戻り、早速お湯を沸かして飲みました。




「どうじゃった?」

「…もってった」

教会の裏で壁に寄りかかった魔術師は、出てきた魔物に話しかけました。デクです。
あの薬草は実はデクが置いていったものなのでした。

「姿を見られなかったろうの?」

大柄な女性の姿をしている魔術師は、デクの周りがピンク色なことに気付いて、鳥肌の立った自分の腕を擦りました。

デクは大丈夫と頷き、ほぅ、とため息をつきました。

ワサビという自分のお嫁さんに会うのはこれが2回目でした。
はじめはほとんど、デクが理性をなくしていたので、はっきりと起きている姿を見たのはこれが初めてです。
といっても、物陰からこっそり覗いていたので、その姿はとても遠かったのですが。





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