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Novel〜孕〜



「何のようじゃ」

少し低めの声で、魔術師が答えると、オカシラはニィと笑います。
そして言いました。

「デクを連れて来い」

「はぁ?」

魔術師がわけがわからないという顔をすると、オカシラは「いいから」と先ほどの不機嫌振りが嘘のようにそういいます。

その何か企んでいる顔を見ているうちに、魔術師はその何かを悟ったらしく、やれやれと呟きながら、またもふぃっと姿を消したのでした。


魔術師がいなくなって、オカシラはワサビに説明をし始めました。

「今から1匹の魔物をここへ連れてくる

そいつは発情期になると理性がなくなるんで、普段はあの魔術師が大人しくさせているんだが、実際は一度も繁殖行為をしたことがない


お前にはその相手をしてもらう」


「は、はんしょ、く…?」

考えた想像がそのとおりでないことを必死に祈りながら、ワサビが繰り返すと、オカシラはますます笑顔でいいます。

「デクは馬鹿だが、魔物の中では、強くてしかも稀少種だ

アイツの脱童貞を手伝ってくれや」

カカカ、と笑うオカシラを見上げながら、想像通りの最悪の展開に、ずりずりとワサビは後ずさりをしました。

またふぃっと音がして、そちらを見たワサビが「ひぃ」と掠れた悲鳴を上げました。


魔術師の隣に立っていた魔物は、


それは大きく、それは醜い魔物だったのです。





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