アビス小説
ありがとう
【ガイルク】
「ガイ、ありがとな」
宿屋の一室で、同室になったルークが突然礼を言ってきた。
「きゅ、急にどうしたんだ?」
正直、ルークが『ありがとう』と言う事に、まだ慣れていない。ましてや何の脈絡もなしにこんなことを言うなんて、以前の彼からは想像できないことだ。
「なに動揺してんだよ」
「いや、本当に変わったなと思ってな」
俺の言いたい事に気付いたのか、ルークは頬を膨らませて、
「俺だって『ありがとう』くらい言うっつーの!」
と言った。
「はは、すまんすまん。で、どうしたんだ?」
「いや・・・アクゼリュス崩落の後、皆しばらくアッシュと行動してたろ?」
「・・・ああ」
つい最近の事だ。よく覚えている。
アクゼリュス崩壊後、自分の罪を認めず、子供のように言い訳ばかりするルークから皆離れていった。
・・・あの時ばかりは、俺もルークを見限った。
そして、皆と一緒に本物の『ルーク』と行動していた。
「あのとき俺、ユリアシティにいたけど、アッシュを通じて皆のこと見ててさ。声も全部聞こえた」
それは初耳だ。
ということは、皆のルークに対する批判も全て聞いていたのだろう。
「それ聞いてて、俺ってホントに嫌われてるんだなって思った」
ルークの表情が微かに悲しみに歪んだ。
でもそれはすぐに元に戻った。
「でも・・・ガイは俺の悪口なんて言わなかった」
ルークはそのときのことを思い出してか、嬉しそうに微笑んで、続けた。
「こんな俺のことをまだ、親友だって言って戻ってきてくれた」
あれも聞かれてたわけか・・・なんだか恥ずかしいな。
「それが本当に嬉しくて、で、そんときのこと思い出したらありがとうって言いたくなって」
「・・・礼なんていらないさ。それに・・・一度お前を見捨てたのは事実だ」
「でも、戻ってきてくれたろ?だから『ありがとう』だよ」
本当に、ルークは変わった。
そして、俺はルークが変わると信じていたからこそ、ルークの元へ戻ってきた。
「・・・お前が『ルーク』でよかったよ。ありがとう」
ルークが首を傾げる。
「?どーゆー意味だ?」
お前が『ルーク』でよかった。
アッシュが『ルーク』だったら、俺は『ルーク』を見捨てていたと思う。それ以前に、ここまで来る前に、殺していただろう。
お前が『ルーク』だったから、俺は『ルーク・フォン・ファブレ』を殺さずにすんだ。
お前が『ルーク』だったから、『ルーク』を親友と呼べた。
「お前には、いつか話すさ」
「?訳わかんねー」
さらに首を傾げるルークがおかしくて、思わず笑った。
〜あとがき〜
管理人の中では、ガイルクはロイジニと同じ様に『親友』なんです!
実は最後の方の「お前には、いつか話すさ」は最初は「お前には、いつか話すかもな」だったんです。お気づきの方もいると思いますが、管理人も気付いてセリフを変えました。何に気付いたって?・・・一言で言うと「ゼロスじゃん」みたいな?
まぁ、このあとがきを見たほとんどの人が「わ〜どーでもい〜」と思ったでしょうね。しかし、ゼロスはゼロス!ガイはガイなんです!以上!!(なんだこのテンション
キミに『ありがとう』を言えるボクにしてくれて、ありがとう――――
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