シンフォニア小説
冬の温もり
【ロイゼロ】
寒い。
何度来ても、この寒さには慣れる事ができない。
まあ、まだ数えるほどしか来たことないけど。
それでも、寒いものは寒い。
別にここが嫌いだとは思ってないけど、あまり長居はしたくない。
あいつは、雪が嫌いだろうから。
「なあゼロス。大丈夫か?」
俺は振り返って、寒そうに自分の肩を抱きながら歩いているゼロスに聞いた。
「だいじょぶって何がよ?」
「いや・・・。雪、平気なのかなって・・・」
雪は、ゼロスの過去に深く係わっている。
そして、それは決していい思い出ではない。
昔はここに来たら気分が悪くなって吐くこともあったと聞いた。
「な〜に言ってんのロイドくん。俺さまはもう過去を乗り越えたワケよ。それに雪なんて、ハニーが俺さまへの愛の力で溶かしてくれるだろ〜?でひゃひゃ♪」
「いやムリだから」
軽口をたたく余裕はあるようだ。それとも本当に大丈夫なのか。
「どっちにしろ、フラノールには何日か居なきゃなんないでしょーが。」
もっともな意見だ。
ここに来た理由は、エクスフィアの回収なのだから。何日か滞在して、エクスフィアの有無を確かめなければならない。
「・・・辛くなったら、言えよ」
「わーってるって〜。・・・ありがとな、ロイド」
「・・・おう」
ふと、目が覚めた。
今夜は大雪だと宿屋の主人が言っていた。
外からは風の音が聞こえる。その音が大きくなるたびに、部屋の窓がガタガタと鳴った。
外の様子が気になって、首だけを回して一番近くの窓を見たが、真っ白で何も見えなかった。
この大雪のせいで、部屋はかなり寒い。
しかし、ベッドの中は暖かい。これならすぐ眠れそうだ。・・・いやまて、おかしい。暖かいというより、むしろ暑い。ていうか何かいる。
恐る恐る毛布の中を覗いてみた。すると・・・
「あ、ハニー起こしちゃった?」
そこには、猫の様に丸まっているゼロス。
「は?」
思わず素っ頓狂な声が出た。
寝起きということもあって、状況がうまく理解出来ない。寝起きじゃなくても理解出来る自信はまったくないが。
「ロイドくん?」
ゼロスが毛布の中から不思議そうに上目遣いで俺を見る。
「えーと・・・とりあえず質問。どうしてアナタは俺のベッドにいるのですか?」
「答えは簡単。寒かったからでーす♪」
質問に答えると、俺の背中に手を回してぎゅーっと抱きついてきた。
「・・・暑い」
「俺さまあったか〜い」
「お前なぁ・・・」
いい加減ベッドから蹴り落とそうかと思って、気付いた。
「うぅ〜、マジでさみぃ」
背中に回された手が、震えている。
「ゼロス・・・」
震えを抑えようと、手が俺の服を強く掴む。
「震えるほど寒いって・・・ありえないっしょ。死ぬ。凍死するぅ」
ウソだ。寒さで震えてるわけじゃないくせに。
辛くなったら言えって言ったのに・・・
「ばかゼロス・・・っ」
背中に手を回して、俺は力一杯、それでも苦しくないように、ゼロスを抱きしめた。
まさか抱きしめられるとは思っていなかったのだろう。
ゼロスの動きが一瞬止まった。
「あったかいな・・・ロイドくんは」
震えも、止まった。
〜あとがき〜
ゼロスは雪がひどくなるほど昔のことを思い出してしまうと思っております!(何を根拠に・・・)
ゼロスも、もうあのときのことは乗り越えたと思ってたんでしょうね。でも、やっぱりムリだった。・・・多分、この寒さを忘れることは出来ないんだと思います。
ロイドにはそんな弱い自分を見せたくなかった。という考えで書いてみました。
この作品、結構書き方が気に入ってたりします。なんとなく。
束の間の温もり。永遠の――――
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