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シンフォニア小説
素直な気持ち
【ロイジニ】



「ジーニアス!」

「わっ!?」

勢いよく開いたドアの音に、読んでいた本を危うく取り落としそうになる。

「びっくりしたー。どうしたのさロイド、そんなに慌てて・・・」

ジーニアスは本を閉じ、ロイドに向き直ってから聞いた。

するとロイドはジーニアスの肩を掴み、真剣な表情で言った。

「頼む。宿題やってくれ」

「・・・は?」

「だーかーらー、宿題を代わりにやってくれ」

繰り返すロイドに、ジーニアスは深くため息をついた。

「ロイド・・・また宿題やらなかったの?」

呆れたように聞くと、彼は、おう、とだけ答えた。

ロイドが宿題をやらなかったのはこれが初めてではない。過去にも何度かあり、その度にジーニアスが代わりに宿題をこなしていた。

「頼むよジーニアス。親友だろ?」

いつもと同じ台詞を言い、まったく反省の色をみせない親友に、さすがのジーニアスも頭にきた。

「いいかげんにしてよ!いっつも親友親友って言ってるけどさ、ロイドにとって『親友』ってなんなの!?宿題を代わりにやってくれる便利な道具!?」

いきなりの怒鳴り声にロイドがたじろぐ。

「そ、そんなつもりじゃ・・・」

「もういい!ロイドなんて知らない!」

その言葉だけを残して、ジーニアスは部屋から走り去っていった。







「ハニ〜♪今日はハニーのだぁい好きなハンバーグだぜ〜」

ジーニアスが部屋を出て行った後、訳がわからず呆然とただ固まっていると、夕飯ができたことを伝えにゼロスがやってきた。

「ってロイドくん、どーしたのよ」

今日はロイドの大好物のハンバーグだというのに、まったく喜ぶ素振りを見せないロイドにゼロスが目を見開く。

聞いても反応のないロイドにゼロスは探りをいれてみることにした。

「がきんちょとケンカでもしたかぁ?」

「!?なんで知って・・・」

「でひゃひゃ。俺さまにはわかるんだよ」

ゼロスはフフン、と鼻で息をならした。

(つっても、さっきすれ違ったがきんちょの表情みれば誰でもわかるけどなー)

そしてロイドと同室だったということを考えに入れれば、答えは十中八九ケンカだろう。

「んで、何があったのよ。このゼロスさまが相談に乗ってやってもいいぜぇ?」

あの仲のいい二人がケンカをするなんて非常に珍しい。こんなおもしろいイベントを見逃す手はない。

ロイドは一瞬、ゼロスに訳を話すべきか迷ったが、このままでは埒が明かないと思ったのか、すぐに決意した。

「それが・・・」



話すこと約十分。



「それはロイドくんが悪いな。うん」

全てを聞いたゼロスは、迷うことなくそう告げた。

「・・・やっぱり俺が悪いのか?」

「あったりまえでしょーよ。どう聞いてもお前が悪い。同じ男として嘆かわしいぜ〜」

「そんなこといっても、俺だってそんなつもりで『親友』って言ったわけじゃ・・・」

「そんなつもりじゃなくても、がきんちょにはそんなつもりに聞こえたんだよ」

ロイドの言葉はジーニアスを傷つけた。それだけは確かだ。

「・・・ジーニアスに謝ってくる。どこ行ったか分かるか?」

「知るかよ。ま、『親友』の行きそうなところくらい、ロイドくんなら分かるだろ?」

『親友』の部分を強調して嫌味ったらしく言う。

ゼロスの言いたいことが分かったのか、ロイドは小さく頷いて部屋を出て行った。

「・・・青春、ってやつぅ?ひゃひゃ。俺さまってばじじくせぇ」

頑張れよ、と小さく残して、軽い足取りでゼロスも部屋を出て行った。







「はぁ・・・」

無意識のうちに出たため息に、ハッとなった。

もう何度目だろうか。ここに来てからため息ばかりついている。

(なんでロイドにあんなこと言っちゃたんだろう・・・)

ジーニアスは宿屋の裏にある人気のない小さな公園に来ていた。

風がひんやりとして気持ちいい。が、少し強すぎる。

(そろそろ戻ろっかな・・・)

こんなところにいて風邪でも引いたら皆に迷惑がかかってしまう。それだけは避けたい。

うつむき加減で元きた道を帰ろうとしたとき、ふと声が聞こえた。

「ジーニアス!」

「ロイド・・・?」

ジーニアスが顔を上げると、そこには肩で息をしているロイドがいた。

「・・・お前に、謝ろうと思って」

「え?」

ジーニアスは思わず声をあげた。

なぜなら、このことは自分から謝ろうと思っていたからだ。

「ごめん!俺、お前を傷つけた。でも・・・俺はジーニアスのことを道具だなんて思ってないから」

(・・・そんなの、わかってるよ)

彼がそんな人じゃないことは、ジーニアスが一番よく分かっている。

ジーニアスが黙っていると、ロイドはそれをまだ怒っていると勘違いしたようだ。

「本当に、ごめん・・・」

(謝らなくちゃいけないのはボクのほうなのに・・・)

ロイドとは違って、ジーニアスはそこまで素直になれない。

(なんで素直になれないんだろう・・・)

自分から怒っておいて自分から謝るというのは、なにか癪に障る。

(いつもこうだ。変なプライドが捨てられない・・・でも、言わなきゃ・・・!)

「ボクのほうこそ・・・」

ごめん、の一言が出てこない。

「宿題も、これからは自分で頑張るからさ」

ロイドがむりに笑顔を作って言った。

(・・・そっか、その手があった)

ジーニアスは心の中で、ポン、と手を打った。

「部屋に戻ろう」

「え?」

ロイドがわけが分からないといった声を上げた。

それはそうだ。ロイドはまだジーニアスの許しの言葉を貰っていない。まだ話は終わっていないというのに、ジーニアスは部屋に戻ると言う。

「・・・宿題、やるんでしょ?・・・手伝って上げるから」

最後の方になるにつれ、声は小さくなっていったが、なんとか聞き取れた。

(これは・・・許してくれたって思っていいんだよな?)

何も言わないロイドに、ジーニアスはこの空気に耐え切れず開き直って言った。

「ほら、早く!今日中に提出しないと姉さんに何言われるかわかんないよ!」

先ほどとは打って変わって明るい声に、ロイドの不安は取り除かれる。

「へへ・・・おう!」

ロイドは照れくさそうに鼻を擦りながら、勢いよく返事をした。







(ごめんねロイド・・・。いつか、ロイドみたいに素直に謝れるようになるから・・・)

だから、今だけは自分にできる謝り方を。

(だから、それまで待ってて)

どれだけ時間がかかるか分からないけど、その時は






真っ先に今日のことを謝ろう。










〜あとがき〜

   やっと・・・できた・・・(ばたっ)
   ロイジニです。ええ、ロイジニですとも!
   なぜか時間が果てしなくかかったんですよねー。ロイジニに挑戦したのがいけなかったのか・・・?
   雪のロイドとジーニアスはあくまで『親友』なんです。恋人設定でもいけますけどね〜。以上、時間がかかったロイジニのあとがきでした。









                                                                                         謝る勇気を願う勇気を――――











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あきゅろす。
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