3話 朝の一件があって浩介は朝から沈んだ気持ちでのスタートを余儀なくされた。それでも、気持ちに活を入れて、一回売り場の食費売り場に立っていた。だがそこに追い打ちをかけるように、 「これ、ください」 と、感情のない声が耳に響いた。カウンターの下の方を見ると、五才くらいの少年が小さなガムを持っていた。その隣には金髪のかなり若い母親がいた。浩介は小さな子供を少し哀れんだ。この子もアレンジで生まれたのだ。この子くらいの年の子はポテトチップやらチョコレートなど、もっとねだるはずなのに、、 そんなことを考えていると、母親が公衆の面前とは思えない金切り声で 「早く会計を済ませて!!塾に間に合わないじゃないの!」 浩介はゆっくりとそのガムを手に取り、 「すいません」 と顔をだけで謝り、レジスキャナーで値段を出した。 「10円です」 母親はさっさっと小銭を10円ピッタリ出してレシートももらわず去っていった。 「急ぐわよ!あの店員はまったく、何を考えているんだか!!」 という捨て台詞を残して。 俺は心の中で「待て!」と叫んだ。母親ではなく子供にだ。君はその母親についていってはいけない。君の未来が壊される。ははおや、、に、、。 そんな心の声も届かず、少年は母と去っていく。その姿は、、、かつての自分を、後ろから見ているようだった。 「あの、、よろしいですか?」 浩介ははっと我に帰り、カウンターの前の客と向き合った。そこには先程の母親とは売って変わった明るい母親がいた。浩介は同じ明るい声で言った。 「申し訳ありません。1030円になります」 [*前へ][次へ#] [戻る] |