[携帯モード] [URL送信]
2話
浩介は朝の声出しにギリギリで間に合った。集合場所の1階エントランスではHPデパート東京店で働く従業員が勢ぞろいしていた。もちろんその中に戸部と和田もいた。浩介はその集まりにそっとはいろうとしたが、鷹の目はごまかされなかった。
「鈴木浩介」
客のいないガランとしたエントランスに鷹こと、神崎逸人の声が静かに響きわたった。神崎はここ東京店の支部長だ。彼もアレンジで生まれており、弱冠20歳で東京の支部長になった強者である。冷たい目で遅刻や失態をしたものに減給や最悪辞職を言い渡す彼は(感情を持つ者の中では)鷹と呼ばれている。
そんな神崎は高そうな腕時計を見つめながら浩介を呼び出した。
「はい、なんでしょうか」
「見ろ」
そう言って神崎は腕時計の文字盤を浩介に見せた。
「何時だ」
侮辱されているような気分を味わいつつ、浩介は文字盤を読んだ。
「8時、、51分です」
それを聞くと神崎は時計を下ろし、浩介を睨みつけた。
「1分と34秒の遅刻だ」
浩介はあまり遅刻をするタイプではない。それが、ここ数ヶ月は戸部に連続で飲みに付き合わされている。おかげで浩介はこの2ヶ月で5回の遅刻をした。今回も戸部のせいでこうなったと言っても間違いではない。
もちろん、いきなり遅刻が多くなった浩介に「最近はどうしたんだ浩介」などと聞く神埼ではない。
「ここ数ヶ月のお前の行為。本来ならばお前はここにはいない。分かっているな」
「はい、、」
神崎の冷たい目を直視できるものはいない。その目はまるで見るものを全て凍りつかせるような目なのだ。
「お前の実績はいいからここにいられるが、、」
神崎はくるりと背を向け、下の位置に戻りながら
「次はないと思え」
と捨て台詞を置いていった。
浩介は何も言えず、スゴスゴと自分の場所に戻っていった。感情なき者たちは浩介を全く見ない。その光景にはただならぬ異様さが漂っていた。

[*前へ][次へ#]
[戻る]


あきゅろす。
[小説ナビ|小説大賞]
無料HPエムペ!