ある雨の日の日記Side.Z

 まずい事になった。
 クラウドがなかなか俺の気持ちに気付いてくれないのに焦れて、今日は酔った振りをして迫ってみようとした。折角の休みだ。クラウドとセフィロスと三人で出掛けるのもいいが、今日は生憎の雨。英雄様の馬鹿広い部屋でゴロゴロしながら酒を飲んでてもいいだろう。
 そして計画通り酔った振りをしてクラウドに絡んでいるとセフィロスの奴までクラウドに迫りだし、結局クラウドの取り合いになった。そんなわけでセフィロスと口論をしていて、クラウドの行動に気付くのが遅れてしまった。

「二人共…何で仲良く出来ないの?」

 床にペタンと座り込んで、俺とセフィロスを見上げてくるクラウド。その大きな目には、うっすらと涙の膜が張られている。

「い、いや、クラウド。俺達は別に喧嘩してるわけじゃなくて」

「そ、そうだぞ、クラウド。頼むから泣くな」

 珍しく焦ったらしい英雄からも、俺と同じ吃り気味の声が出ている。それもそうだ。酔っ払ったクラウドは、とにかく質が悪い。機嫌を損ねないように、こっちがとことん下手に出なければならない。

「俺が居るから…駄目なの?俺が居るから喧嘩するの?」

 まずい。きっともう、クラウドの中ではネガティブ思考がいつも以上に炸裂しているに違いない。
 酔ったクラウドは、極度の泣き上戸になる。何でもかんでも自分の所為にしてしまう。

「違うって、クラウド。な、落ち着けよ」

「らってそうじゃないかぁ!俺が居なかったら、二人共仲良くれきるんらり…っ」

「らり?」

 呂律の回っていないクラウドに、思わず首を傾げてしまう。しかし、クラウドはそれが気に入らなかったようだ。

「らり、なんて言ってらいらら…、り?」

「クラウド、酔ってるだろ?」

「うるしゃいっ!酔ってらい!ザックシュきやい!」

 思わぬクラウドの「嫌い」発言に大ダメージを受けて、頭がグラグラする。

「き…嫌い、キライ、きらい?」

 つい言われた言葉を繰り返す。今日は、クラウドに酔った振りをして絡んで楽しく過ごそうと思っていたのに。

「…」

 何も言わずに、セフィロスがグラスに酒を注いでくれる。珍しく同情してくれているようだ。「俺ってそんなに可哀相?」そう口に出そうかと思ったが、今以上に哀れみの眼を向けられては堪らないのでやめた。
 そして結構な量呑んでいた俺は、そのまま眠りに落ちた。


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