ある雨の日の日記Side.S

 全く、仕方のない奴らだ。世話の焼ける。
 眠ってしまったザックスの頭を一蹴りし、酔って泣きじゃくっているクラウドを抱き締め、俺は溜息を吐いた。
 俺達は傍から見れば「仲の良い三人組」らしい。実際そうなのかも知れないが、今まで友人など持った事のなかった俺にはよく判らない。けれどいつも三人一緒に居るのは事実。今日もそうだった。
 三人の休みが重なるというのは珍しい事なので、クラウドをどこかに連れて行ってやりたいと思っていたがこの大雨ではそれも出来ず、結局俺の部屋で過ごしていた。
 酔った振りをしてクラウドに絡むザックスをからかいつつ、酒を楽しんでいた。だが、クラウドが酒を飲んでしまった。例えザックスが寝なくとも、その時点で今日はもうお開きと決まっていた。何故なら、酔ったクラウドは厄介極まりないからだ。

「せ…セフィロス、さん…。ザックス、は?」

「ああ…、眠ってしまったようだな」

「な、何でれすか…?」

「…飲み過ぎただけだろう。気にするな」

「お…俺の所為らぁ…」

「…何故そうなる」

 つい、微笑を浮かべた口元が引きつる。全く、こいつの思考回路は理解出来ない。
 ザックスもよく突拍子のない事を言い出すが、あいつの思考回路は単純過ぎるので何故そういう考えに至ったのかは容易に想像出来る。しかしクラウドの場合は考えに考えを重ね過ぎている上基本ネガティブ思考な為、何故そういう考えに至るのか全く以て理解出来ない。
 果たしてこの酔っ払いに本当に考えがあるのかは謎だが。

「らって、らって…俺、俺がぁ…。俺が駄目なんらぁ…」

 よく解らない理由で自分を責めつつ俺の腕の中で泣きじゃくるクラウドは、はっきり言って可愛い。だがやはり、それ以上に厄介だ。

「クラウド。…落ち着け」

 そう言いながら小さな背中を優しく擦ってやる。クラウドがしゃくり上げる度に僅かに跳ねる身体が、次第におとなしくなっていった。

「っく…、ふ…」

「…よしよし」

 全く、俺はクラウドの保護者か何かか?
 そう心中で呟きながらも、弱くなっていく嗚咽につい穏やかな笑みが零れる。

「さあ、クラウド…いい子だ」

 背中を擦る手はそのままに耳元でそう囁いてやれば、腕の中の子供からは穏やかな寝息が聞こえてくる。

「やっと眠ったか…」

 やっと泣き疲れて眠ってくれたクラウドを抱き上げ、ベッドに連れて行く。リビングに戻り、煩く鼾を掻くザックスをどうしたものかと思案する。

「ん〜、クラ〜…」

 このまま放って置こうかとも思ったが、そんな寝言を言いつつソファに口付ける姿を見てつい哀れんでしまった。
 結局無駄にでかい俺のベッドの真ん中にクラウドを寄せ、その左にザックスを寝かせて自分もクラウドの右側に寝転ぶ。先刻ザックスがクラウドの名を呼びながらソファにキスをしていたのを思い出し、念の為クラウドを抱き寄せてこちらを向かせ、その癖のある金髪に軽く口付けた。
 リビングの片付けは明日ザックスにやらせよう、そう少し思案して。

「…おやすみ」

 小さなクラウドを強く抱き締め、短く呟き眠りに着いた。


end

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あきゅろす。
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