[携帯モード] [URL送信]

小説(岩男)
黒と赤 3(完結)【黒クイ×クイ】



ブラックの姿は見えない。


だが自分はブラックの存在を感じることができた。





引きつけられるような感覚のおかげでブラックの居場所はなんとなく分かるのだ。







「なぁ・・・。」





クイックは自分の先にいるであろうブラックに声をかけた。


もちろん返事はない。






そのせいかクイックはなんだか暗闇に飲み込まれていくかのような錯覚を覚えた。



暗闇に飲み込まれ、孤独になってしまうかのような錯覚を・・・。






「おい・・・。おい・・・!返事しろよ!」





正直クイックは必死だった。



返事が返ってこなかったら自分は今『孤独』なのではないかと。





「・・・っ!ブラック!!」








「・・・なんだ?」






クイックが彼の名を呼ぶと面倒くさそうな声が暗闇の中から聞こえた。





クイックは安心すると同時にムッとした表情になってこう言った。






「いつまでこんな真っ暗なとこを歩くつもりだ。・・・それともこの真っ暗な中で殺り合おうっての・・・か・・・!?」




クイックは話している途中で言葉につまった。



その理由は、真っ暗な森を抜けた後の美しい景色であった。





青白く光る月がそびえ立つ岩の壁を照らし、人が使うような明かりが一切ないせいか夜空に沢山の星が瞬いている。
青白い月明かりは相当明るく、ブラックとクイック・・・そして辺りを明るく照らしていた。








「・・・・・・。」






綺麗だった。



黒い機体がその風景にピッタリとはまっていた。









「どうだ、美しいだろう?」







ブラックはそういって少し微笑んだ。




冷たい目を持つ彼だが、やはり感情はそこそこ持ち合わせているらしい。






「あぁ・・・綺麗だ。」




クイックも素直にそう答える。

するとブラックは沈黙して月を見た。






どうしたのかとクイックは自分も夜空を見上げる。





どれほどそうしていただろうか・・・、
ブラックは月を見つめたまま突然こんなことを言い出した。







「・・・ここなら・・・どちらが壊れても・・・安らかに眠れるだろ?」






クイックは驚いて、その言葉を言ったブラックのほうを勢いよく振り返った。



冗談かと思ったクイックの思いを打ち砕いたのはブラックの表情だった。





そんな物騒なことを言いながら笑みを浮かべていたのだ。







クイックはブラックに向かって舌打ちをすると、睨みつけながらこう言った。





「・・・そうかよ。そんなに殺り合いたいのかよ・・・!だったらいますぐぶっ壊してやる!」






クイックはそういってブーメランを投げつけた。

ブラックは自分のブーメランでそれを受けるとニヤリと笑みを浮かべ、姿を消したかと思うとクイックの目の前に表れた。



「・・・ッ!!」




クイックは持ち前のスピードと反射神経で向こうの攻撃を避けると、ブーメランで反撃した。




「ッぐ!・・・やはり本物は強いな!だがッ!」





ブラックはブーメランによって肩の部分を負傷したにもかかわらず、クイックのほうに向かってきた。









クイックは気づいた。
確かにブラックは戦いを楽しんでいる・・・だが、


その結末として自分が勝つことを望んではいないのではないか・・・。






「何をしている、クイック!隙だらけだぞ!!」



クイックがハッとしたときにはもう遅かった。
目の前に迫るブラックのブーメランを腕を犠牲にして止めると、すでにブラックが目の前にいた。






殺られる・・・!






そう思ったクイックの左頬にブラックの鋭い右拳が食い込んだ。







「ッ!ゲホッ!!・・・やっぱりか、ブラック・・・。

お前は俺を殺そうだなんて思ってないんだろ!?そうだろ!!」






クイックがそう叫ぶとブラックはフッと笑い、「だとしたらどうするんだ?」と言った。







「別にどうするわけでもねェけど・・・ただ・・・理由が聞きたいんだ。」




「理由?お前と戦いに来た理由か?」




「ああ。・・・どちらに利益があるわけでもない戦いを・・・何故しにきたんだ?」







クイックの問いに、ブラックは自嘲ぎみに笑うとこう言った。









「お前に・・・惚れたんだ。」








「・・・は?」





「お前に惚れたんだ。俺は。」




ブラックはそう言ってから身を翻した。







「お・・・おい!どこ行くんだよ!?」




クイックはそう言ったが、ブラックは振り返ることもせず暗闇に消えていった。




ブラックは結局どうしたかったのだろうか・・・



クイックはふとそんなことを考えた。



本体の俺を殺したかったのだろうか・・・
それとも本体の俺に殺されたかったのだろうか・・・。




だがクイックは二つともなんだか違うような気がした。




『お前に惚れたんだ。』



そう言ったブラックの顔を思い出した時、クイックは分かったような気がした。





そうか・・・お前は・・・




本体という俺じゃなく・・・クイックマンという俺自信の存在を欲していたのか・・・。




クイックは「歪んでるな。」と思いつつ、空を見上げた。



暗闇は、昇りだした朝日の光に掻き消されてどこかへ消えていった。

だが、また夜になったら現れる。







「だから・・・また会えるだろ・・・?



ブラック。」









End


あとがき



いやぁ・・・長くなってしまい申し訳ありませんでした・・・orz

やけに続いてしまって←


とりあえず黒クイとクイックは逆なんだけど、たぶんどこか似ているといい。

・・・って、自分設定ですねサーセンorz


黒クイックという素敵設定を下さった佳月様!ありがとうございました!!


長々と書きましたが、ここまで見てくださった皆様!ありがとうございました!


[*前へ][次へ#]
[戻る]


第3回BLove小説漫画コンテスト開催中
[小説ナビ|小説大賞]
無料HPエムペ!