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不安定、その先の愛  (忍足・微裏)
あたしは今、はじめて侑士から離れたいと思った。
それは付き合ってはじめてのことか、出会ってはじめてのことか。
きっと、出会ってはじめてだと思う。
それぐらいあたしは、侑士のことが好きだった。



「離して」

「嫌や」

「離してっ!!!!」

「絶対離さへん・・・椿がわかってくれるまで離さへん」

「あたしがわかるまで?
 なんの説明もなしで、さっきからずっと"誤解やって"しか
 言わない人の話をどう理解しろと?」

「やから、説明は出来へんねん・・・とにかくあれは浮気ちゃう!!
 俺には椿だけやから信じてくれて言うてんねんやん」

「その軽い言い方も嫌だって言ってるの!!」

昨日・・・金曜日の放課後、侑士はあたしにめずらしく
「別々に帰ろう」と言ってきた。

そのとき理由は、たしかテニス部の練習が長引くかも・・・だった。

それがどうしたものか

侑士は屋上で女の子と2人、仲むつまじく話しているではないか。

偶然思い出した、その日のうちに返す予定だった本。
テニス部に「いない」と言われて、あたしは侑士を探した。

見つけた矢先のことだ。

侑士と隣りの女の子は目を見開いている。
あたしはとりあえず笑って、

「侑士、これ今日中に返すって言ってた本!
 邪魔したらいけないから、ここに置いとくね。
 あたしは1人で帰るね。
 じゃ、2人でごゆっくり!」

と言って走った。
涙が溢れた、侑士は追ってこない。

そして今、家に押しかけてきた侑士に抱きしめられている。


「侑士がそんなことしか言えないんなら、
 あたしもこういう態度しかとれない」

「じゃあ・・・なんて言えば説明なしで許してくれんねん・・・」

侑士にしては実に情けない声だ。

「何言っても許さない。
 説明出来ないなんて怪しすぎるもん」

「そんなん・・・なら俺やって離さへん」

「わけわかんない!」

「椿が俺を信じたらええだけやん!
 説明は出来へんけど、100%浮気ちゃうって!
 何回でも言ったる」

「そのなげやり加減だって嫌なの!!」

あたしがどうしてこんなにしつこいのか。
侑士に限って、浮気するなんてことはないと思ってる。
何か特別な理由があることもわかってる。

だけど、侑士はモテる。

どうしても釘を刺しておきたかったし、
ちゃんと理由を聞かせて欲しかった。

「侑士、痛い」

「こんくらいキツく抱きしめてへんと、椿逃げそうやから」

「・・・もういいじゃんか!可愛い子だったじゃん、彼女。
 その子いるなら、あたしに嘘付いてまで一緒にいる価値ってあるの!?
 もう好きじゃないならちゃんと言ってよ。
 あたし知ってるよ、侑士がすっごくモテること。
 そりゃあ、あんなにいっぱいの人に告白されてたら
 あたし以上に惹かれる人とかそそられる人とかいるよね!
 あーあ、羨ましいな!
 あたしはもう何年も侑士一筋なのにさ!
 でももう侑士なんて嫌いだよっ、大っきらっ・・・んっ!!」

泣きながら1人で何を言ってるんだ、あたしは。
これじゃあただのわがままじゃないか。
ええい、もうどうにでもなれ!!

そう思った矢先、侑士はあたしをすごい勢いで押し倒した。
腕をキツくつかまれて、無理矢理キス。
若干頭を打ったあたしは、一瞬意識が飛んだ。
それでもまた意識を戻らせるような、呼吸もままならないキス。

離れたとき、侑士の顔は怒りに満ちていた。

それでいて、切なく見えた。

侑士にはありえないような表情だった。

「自分・・・いい加減にせえよ・・・」

「なにそれ・・・自分だってめちゃくちゃなクセに!!
 痛いっ!!」

キツく掴まれてる腕は、血が通っていないのか白く見える。

「そないに俺が信じられへんか・・・」

「当たり前でしょ!理由も説明出来ないんだもん。
 ここで信じたらあたしは騙されてるかもしれないんだよ!!」

「・・・なら、俺のやり方で信じさせる・・・」

耳元で囁かれて、侑士の手はあたしの体の横を滑っていく。

「ちょっとやめてよ!こんな気持ちでしたくないっ!」

「そんなん知らん。俺が抱くのは椿だけや。
 今までもこれからも、愛してる。
 愛しすぎておかしくなりそうやわ・・・
 そんな椿との関係をつなぎとめるためやったら
 俺は父親にやってなる覚悟あるし、無理矢理やって・・・」

「侑士!!!そういうのって言っていい時と駄目な時があると思う!
 高校生なんだし、もっと大人になってよ!!」

「それは椿も同じやろ!大人気ないんは同じや!!」

「それは―――っや・・・ゆ、しっ・・・んっ」

首筋に吸い付く、そこから上に・・・下に・・・キス。
スカートをはいていたのは、よくなかった。
こんな強姦まがいの行為にさえ感じてしまうあたしは、
本当に最悪だ。

あたしはよっぽど侑士のことを愛しているんだろう。

そうわかると、いっきに気が抜けた。
今までのは全て侑士がモテるから故の・・・嫉妬だ。
気を抜くとすぐに、弄ばれていた体が急に軽くなった。
キツく掴まれていた腕もほどかれ、優しく抱きしめられた。

「侑・・・士・・・?」

「告白・・・されたんや、あの子に。
 ほんで断って、納得してなさそうやったから
 俺が椿のことどんだけ愛してるかを語っとってん・・・
 そしたらあの子、1年のとき椿と結構仲良かったらしいやん?
 椿のいいとことかめっちゃ話おうて、つい盛り上がってしもた・・・」

たしかにそれならつじつまが合う。
あの子・・・片岡 都は1年の時、あたしと仲がよかった。
2年になってあまり話さなくなったけど、
それこそ都が侑士のことを好きだったなんて・・・

「あの子にこのことは椿に黙っててくれて言われてん。
 誤解されると思うけど、椿はめっちゃ忍足くんのこと
 好きやから、大丈夫だよ・・・て。
 やから俺は言われた通りにした、それだけや」

都は優しくて、すごくちゃんとしてて・・・
だから考えがあったんだろう。
なんとなく色々誤解して勝手にイラだっていた自分が本当に
嫌になって、また涙を流した。

侑士も都も、すごく優しいんだ。

「うっ・・・ごめ、なんかもうやだー・・・あた、し最悪っ・・・」

「ちょ、椿、とりあえず下着とかをちゃんとしてから
 泣いてくれへんかな?」

「らって・・・うっ・・・あた、あたあたあた・・・うわ・・・」

「落ち着いてから喋ってくれ、頼むわ」

「お、おちおちおち・・・つかっな、いし!」

「わかった?俺は誰にでも優しいてことや。
 そして、約束を守ろうと頑張っていたということや」

侑士は勝ち誇ったような顔をする。

「そういうのって・・・なんかズルいし・・・意味わかんないし・・・」

「俺の椿のことやから、すぐ"まあいいよ"って
 言ってくれると思っててんけど、あまりにもグズるから・・・
 こっちも理性切れてしもたわ」

優しく抱きしめられて、頬に唇を落とす。

嫉妬するのはやめよう。
実に大人気なかった。
あたしは侑士の女なんだ。

そう思うと、侑士がモテようが・・・どうでもよくなった。

「ほんま可愛いわ・・・椿」


ほら、
こうして
侑士は
ちゃんと

あたしを

愛してくれている。




 

END――――







ふっと浮かんで、消える前に書いとこうと思ったもの。
結局なんの意味が込められてるのか不明のまま。
ていうかもう、良唯の侑士に愛されたいという想いが
こもりまくってるべたーな作品です←
ちょぇっ・・・ほっといておくれぃorz


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