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下 剋 上  (日吉・微裏)
水上椿と日吉若は、恋人である。
2人は恋人同士であり、部活のマネージャーと後輩部員の関係でもあった。
基本的には仲が良く、世に言う「ラブラブ」という状況だった。
 
 
というのはただの説明で、本題はこれなのだ。
 
 
 
「ひ…日吉く〜ん…??」
 
「・・・・・」
 
「日吉若様〜!!」
 
「・・・・・」
 
「…ぐすん」
 
「嘘泣きは通用しませんよ」
 
「・・・・・」
 
2人っきりの部屋に漂う、よからぬ険悪な雰囲気。
 
なぜこうなったかと言うと
 
それは沈黙が始まった30分前の30分前…
 
つまり1時間前のことだった。
 
 
「ねぇねぇ、日吉の好きな言葉ってなんだっけ!」
 
「…なんですか、突然」
 
「いんや、ね、なんとなく!」
 
「下剋上…ですよ」
 
「そうだよね!げこくじょー♪いい響きだねっ」
 
「なんで聞いたんですか?」
 
「いや、なんでもない」
 
「気になるんですけど」
 
「確認だよ、確認!!
 あたしはちゃんと愛する人のことをわかってるかという!」
 
「なんですか、それ…」
 
「あははははは」
 
「なんか妖しいですよ、いつもですが。なにか隠してません?」
 
 
日吉は、ずいっと椿に顔を近づけた。
当然のように、顔を赤らめてとぎまぎする椿。
 
 
「いや…"下剋上"って言葉について考えてさあ…」
 
「へぇ…どんなこと考えてたんですか?」
 
顔をスッと離して、また雑誌を手に取る日吉。
 
「下剋上の言葉の意味を…ちょっとね!」
 
「何か疑問なことでも?」
 
「いや〜…意味がさ…」
 
 
 
下剋上―げこくじょう
「下、上に剋つ」の意
下の者が上の者をしのぎ倒すこと。
(goo辞書より)
 
 
 
「意味が?」
 
「下の者って"弱い者"って意味だよね」
 
「それがどうしたんですか?」
 
「日吉…自分のこと"弱い者"って決め付けてるのかなぁと…」
 
 
「はぁぁぁ!?」
 
 
大きく目を見開いて、再び顔を椿に近づける日吉。
 
びくっと体を震わせる椿。
 
「それって"弱いって気づいてるなんてえらいねぇ"という意味で言ってるんですか!?
 俺が弱いわけ…!!」
 
「違うって!!そういう意味で言ったんじゃなくて…その、えっと…」
 
日吉がそういう意味で"下剋上"という言葉を好んでいるわけでは、もちろんない。
いかなるときでも、いかなる相手でも、自分が勝つ…そういう意味で好んでいるのだ。
 
彼とて、自分の実力には自信を持っている。
 
彼の勝気で強引な性格は、恋人である椿が一番わかっているのではないか。
 
日吉本人にも、そんな疑問がやはり浮かんできた。
 
「俺をバカにしてるんですか?」
 
 
そしてむしょうに腹が立って、仕方なくなったのだ。
 
 
そして今に至る。
 
 
日吉はまだ怒っていた。
が、彼女は本当に泣きそうになっている。
 
ここは男が潔く折れるしかないのだ。
 
「…そういう意味で言ったんじゃなかったら…なんなんですか?」
 
「うぅ…ひっく…ひ、よしぃ〜」
 
「泣かないで下さい。俺が泣かしたとしても、なぐさめようがないです…」
 
「ごめ、ごめんねぇ〜!!ちがっ、理由ある・・・だけ、ど」
 
「あるんなら早く言って下さいよ。椿先輩の泣き顔は俺としても、なんとなく辛い…ですし」
 
椿は顔をぐしぐしと袖でふき取る。
日吉はそれを見て、頭をなでてやる。
 
大人気ないことをした…などと思いながら。
 
「あんねっ!!あたしが言いたかったのは、日吉は全然弱くないんだよってこと!」
 
「は?そんなことわかってますよ」
 
「あ、そう…ならよかったんだよ…
 もしさぁ日吉が"自分は弱い"とかって決め付けてたら…と思って」
 
「そんなわけないでしょう。俺に限ってありえませんよ。
 鳳とかならあっても普通ですがね」
 
「ひどっ!!ちょたがかわいそうでしょうが!」
 
「まぁ…心配してくれてたんでしょ?
 それは…嬉しい、です」
 
「えへへ〜…日吉真っ赤だ〜!!」
 
からかってくる愛しい恋人を前にして、日吉は黒い笑みを浮かべる。
上…下…たまには下でもいいな…などと思いながら。
 
「っうわ!!えっ、日吉っ!?」
 
「今まではずっと先輩が下でしたよね…
下剋上ってことで、今日は先輩が上…っていうのはどうですか?」
 
椿を抱き寄せて、耳元で囁く日吉。
立場逆転、真っ赤になったのは椿の方だった。
 
「ちょ、なんの話してるのかなあ〜…ひ、日吉く〜ん?」
 
「…わかってるんだろ?それなのに隠すなんて…余計にいやらしいな、椿」
 
初めて敬語が取れる、初めて名前で呼ばれる。
 
彼女は当然、口から心臓が飛び出そうな状況になっている。
 
「ひ、よし、ズルいっ!!!んっ…!?」
 
 
突然キス。
 
 
「"若"って呼ばないと、お仕置きだからな…」
 
「わ、わわわわ若っ!!」
 
「…言えたな…それなら、ご褒美だ…
 お前が下剋上するんだぞ」
 
「意味がおかしいっ!!
 それは下剋上って言わなっ…んっ…」
 
キスとちょっとした愛撫だけで大人しくなる、自分より小さくて弱い椿。
日吉は、これでも先輩なんだなぁということを、止まらない愛と欲を彼女と共有しながら感じる。
 
この場合、日吉に下剋上をする必要はなく、彼女が下剋上するべきだ。
 
「けどまぁ…椿が俺に下剋上できるわけないんだけどな…クスッ」
 
「何笑って独り言言ってんのよっ!!若のバカ!」
 
ここには俺にとっての下剋上はない。
 
それは、
   いい意味で。
 
 
 
――END
 
 
 
 
 
日吉書けましたよう!!!うれC〜ww
なんかピヨシ優しいですね。
日吉大好きです、ほんっとに。
忍足侑士に続いて、二番目ですかね(・∀・*)
愛してるよ、若d(・X<*)
下剋上等!!!!(黙りなさい)
最後までありがとうございました^^
 


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あきゅろす。
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