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縁は異なもの、味なもの。  (鳳)
 

「椿せんぱ、い!!

 

 ずっと…す、好きでした!

 俺と、付き合って下さいっ!!」

 

すごく嬉しい。
嬉しいけど、


 

 

トイレの目の前って、どう思いますか?

 

 


   縁は異なもの、
         味なもの。






「えっと―…場所、変えようか…?」


「え!あ、いや、ここでいいですよ!」



いや、あたしがよくないんだよ。



時は放課後。
あたしはまあ人間的な生活に適って、
用を足しにトイレに来ていた。

そして、ごく普通に手を洗い外に出た。

そうだ、たしか帰ったらビデオに録った
ドラマを見ちゃおうとか考えてたときだ。


長太郎くんに告白された。


嬉しかったことに別に疑問はない。
幼馴染の亮を間にして交流もあったし、
あたしは長太郎くんに惚れていた。


「え…じゃあここでいいけどさ…」


「え、えっとそれで…」


必死に何かを言おうとして、真っ赤になってる長太郎くんは
絶対にトイレの前から離れたくないらしい。

1人の乙女として、トイレの前でこういう話をするのは
気が引けてしまうのが本音だ。


「初めて会ったときから、俺は椿先輩のこと見てました…
 その…先輩は宍戸さんとすごく仲がいいから
 途中で諦めようとも思ったけど…無理、でした…」


「うん…」


長太郎くんの言葉1つ1つに頷きながらも
頭の中では"どうしてもここを離れたい"
という想いが激しく巡っていた。


「だから…俺、覚悟決めたんです…」


そもそもなんで彼は、このタイミングで言ったのか。
あたしがトイレにいることは知っててもおかしくないとして、
どうしてこのタイミングなのか。
昼休みだって、十分に暇だったのに。
失礼にもほどがあるが、あたしは結構上の空だった。



「今日、先輩が好きなこの場所で…好きって伝えようと…」


トクン…体は正直に、鼓動を早くする。

が、

ドカン…もう1つの衝撃を音にするならこんな感じだろう。



「な、なんだって!?」


「わっ!え!?」


「こ、ここがあたしの好きな場所!?」

あまりにも意味不明に繰り広げられる展開に、
あたしはついに声を上げた。

長太郎くんは、当然のようにビクッと体を震わせる。


「…えっと―…それ、誰に聞いた?」


「それ…?」


「あたしが―…その、トイレの前が好きってこと」


なんとなく予想は付くけど。


「あ、あぁ…それは、忍足先輩と向日先輩です…」


やっぱり。


「亮は?」


「え、あ、宍戸さんはなんか樺地に抑えられてて…」


やっぱり。

亮がそんなバカなことしないってことはわかってた。
となれば残りはあたしをよく知ってる人。
亮と長太郎くん絡みの男子テニス部員であって、
そんなことをするのは忍足とがっくんだけだ。

どうせ跡部や日吉くんはめんどくさがったんだろう。



「なるほど…謎は解けた!」


「へ?」


「ん、まあいいの。
 とりあえずこれは知っといてね。
 あたし、トイレの前は別に好きじゃないよ。
 忍足とがっくんの嘘だよ、それ」


「え!?本当ですか!?
 お、俺、すごい失礼なこと…!!」


「全然いいから!
 忍足とがっくんには後で言うとして…
 続き、話して欲しいな」


恥ずかしさからへたっとしゃがみ込んでしまった長太郎くんと
目線を合わせるようにしゃがむ。


「俺…恥ずかしくてもう…」


「もっかい、ちゃんと聞きたいな」


「椿先輩…」


「長太郎くんの言葉が、聞きたい」


ちょっと甘えて言ってみた。

場所とタイミングの謎さえ解ければ、
この時間はあたしにとってかけがえのない
一生に二度とない時間だ。

長太郎くんは、顔を上げて
凛々しくあたしの目を見つめた。


「椿先輩…俺、先輩のこと…
 ずっと好きでした…

 俺と…付き合ってもらえませんか?」



閉め切れてなかったらしい蛇口から漏れる水音が
あたしの鼓動とゆっくり重なった。



赤くなりながらも、ちょっと微笑んでる長太郎くんを見てたら
なんだかあたしまで照れが移ってきて。


「…よろしくお願い、します…」


長太郎くんと出会ったときから
どこで告白されようがすぐに言おうと決めていたこの言葉に、
死ぬほどの勇気を使ってしまった。


その後、何故か恥ずかしすぎてトイレに駆け込もうとした
あたしの腕を引き寄せて、抱きしめて


 
「…愛してます、椿先輩…」



と長太郎くんが言ってくれたとき
ちょっとだけトイレの前が好きになったのは秘密だ。












――END






 





はい意味不明!
衝動的にちょたが書きたくなったのでw
照れ屋の天然さんだいすき!
シングル発売おめでと!!

ありがとうございました♪


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あきゅろす。
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