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Re:fraIn.T  (蓮二連載)
「蓮二・・・すまない」

 
「どうした?貞治」

 
「椿に・・・蓮二の居場所を教えてしまった・・・」



 
 
 
 
 
 
 
 
僕らは新たに

その出会いを

繰り返す。



 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
Re:fraIn.T
   ―リフレイン―



 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
幼なじみの貞治からそう聞かされたのは、去年の12月ぐらい。
 
ちょうど受験の準備に入るぐらいの時期だった。
 
高1の春現在、貞治とは4年と2ヶ月と15日振りの再会を果たし
 
正々堂々と勝負をした、よきライバルである。
 
 
 
そして、俺たちにはもう1人・・・忘れてはならない存在がいる。

 
 
それが話題の中心になっている、望月椿だ。

同じテニスクラブ内でも特別運動神経が悪く、いつもストレート負けしているのが椿だった。

俺たちは、バカにされても努力を続ける椿を助けたくて、データでサポートを始めた。
 
 
 
それが3人の友情の始まりだった。

 
 
 
 
「まさかとは思うが・・・神奈川まで来る可能性は・・・」
 
 
「それはわからない・・・あいつならやりかねないぞ」
 
 
「・・・・」
 
 
「志望校は定かではないが、あいつは青春学園高等部に行くわけではなさそうだ」
 
 
「・・・・」
 
 
「立海大附属を受ける可能性も十分あるぞ」
 
 
 
 
椿は俺が何も言わずに引っ越してから、ずっと俺を探していたという。
 
 
 
 
他校に偵察に行ったり、新しい友達には絶対に
 
「柳蓮二って知らない?」
 
と聞くほど必死だったと貞治から聞いた。

 
 
 
「前にも言ったが・・・椿はおそらく、あの頃からずっと・・・」

 
「・・・わかっている。わざわざすまないな、貞治」

 
「あ、ああ。また情報が入り次第連絡する」

 
「ああ、頼む」

 
 
ゆっくりと携帯電話を閉じて、ため息をつく。

 
 
貞治から、椿の写真は見せてもらったことがある。

小学生の頃の椿は、泣き虫でか弱い・・・本当に"少女"という雰囲気を持っていた。
 
 
それでいて明るく、よく笑う少女だった。

 
 
 
写真の椿には、大人っぽさがあった。
 
 
あの頃の少女っぽさは少なく、どっちかと言えば間違いなく"女性"だった。

 
 
 
俺は元々、椿に恋愛感情は抱いていなかった。

 
 
 
きっと・・・今も一緒だ。

 
 
 
もし、椿が立海に来たとして・・・。
 
俺は椿に期待をさせないように過ごせるのだろうか。
 
 
 
"好き"のニュアンスの違いを、傷付けずに理解させることはできるのだろうか。


 
その時俺は、必死で椿を傷付けずに離す方法しか考えていなかった。

 
 
そう、自惚れていたのだ。


 
 
 
 
 
 
 
――――――――
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
「あのー・・・」
 

「え、あたし?」


「はい!あたし学校見学に来てるんですけど、この学校に・・・ってあれ?」




何もしていないのに、逃げられてしまった。




まるでこの12月の風のように冷たい人だ。

東京と神奈川には親切さに差があるのか?

青学の人たちの優しさを思い出して、ここの人たちに少しイラッとする。


優しそうな黒人っぽいハゲの人を見つけて、声を掛けることにした。



どこかで聞いたことがある、ハゲに悪い人はいないと。

 
 
 
「あのー・・・すみません」
 
「ん?あ、ジャッカル!これ青学の制服じゃねえ?」
 
「そうだな・・・。なんですか」
 
 
どうやらこの赤毛の人とハゲの人は、青学を知っているらしい。

 
「あたし、青学から学校見学に来たんですけど・・・この学校に、柳蓮二って人いますか?」
 
 
あたしがそう言うと、赤毛の人とハゲの人は顔を見合わせて頷く。

 
「いるぜぃ?俺たちと同じテニス部に」
 
 
「ほ、本当ですか!?」
 
 
「ああ。本当だ」
 
 
「わ、あ、ありがとうございました!」

 
 
 
 
あたしは嬉しさのあまり、走った。
 
どこに行くわけでもなく、とりあえず走った。
 
 
やっと見つけたんだ。

 
ここに蓮二がいる。

 
 
 
 
 
 
 
 
立海大付属に!



 

 
 
 
 
 
 
―――――――
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
「柳、柳〜!」

 
「なんだ?」
 
 
HRが終わって、帰ろうと思ったところを丸井とジャッカルに止められた。

 
「今日さ!昼休みに青学の女の子に、"この学校に柳蓮二って人いますか"って聞かれたんだよ」
 
 
「で、俺たちがいるって答えたら、すげえ嬉しそうに走ってどっか行ってさ。知り合いか?」
 
 
 
 
青学
 
 

 
 
俺がいると知って喜ぶ。

 
 
 
俺は瞬時にキーワードを並べて、分析する。
 
 
 
 
椿以外にいないと思った。
 
 
 
 
「女にしては背が高かったか?」
 
 
「んー・・・俺と同じぐらい!164ぐらいじゃねえか?なあ」
 
 
「ああ。そんなもんだ。あと、髪にウェーブがかかってたな」
 
 
椿の身長は164cm、髪は天然パーマできれいなウェーブがかかる・・・
 
貞治から聞いた情報が確かなら、それは紛れもなく椿だった。

 
「ありがとう。多分知り合いだ」
 
 
「ふーん!柳って青学に知り合い多いんだな!」
 
 
「まあな」
 
 
 
 
 
 
 
 
 
俺は家に帰ってすぐ、貞治に連絡した。

 
 
「そうか・・・。その様子では、椿が立海大付属に入学する確率・・・」
 
 
 
 
 
「貞治、お前はそれでいいのか」

 
 
 
 
 
気付けば口にしていた、ずっと聞きたかった真実。

 
 
 
 
 
「よくは・・・ないな」
 
 
自分を嘲るように笑う貞治。
 
 
 
 
 
 
 
「あいつを止められるとすれば、お前しかいない。気持ちをはっきりさせてくれ」
 
 
「はっきりさせたところで、こればっかりはどうにもならないさ。恋愛にデータは通用しないからね」
 
 
 
 
あっさりと言うところを見ると、貞治はもう割りきっているらしい。
 
 
 
 
「あとは蓮二次第だよ。むこうが嫌になれば、必ず椿はこっちに帰ってくる。
 
ただ、相当なことがない限り、苦にしないぞ。あいつは」
 
 
 
そう言って、また笑う。

 
 
どうして俺なのだろうか。
 
 
 
 
4年以上空いた距離があるというのに・・・。

 
 
 
不思議でならなかった。


 
 
 
 
 
 
 
―――――――
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
春は願った分、早くやってきたように感じた。

 
 
 
 
 
 
 
 
 
あたしはしっかり勉強した成果を発揮し、見事に立海大付属高校に入学した。

同い年の従兄弟がちょうど立海から近い所に住んでいて、そのお家に世話になることになった。

 
 
これで蓮二に会える。

 
 
ずっとずっと大好きだった・・・蓮二に・・・。

 
 
 
 
 
クラスには蓮二はいなかった。
 
 
あたしは少なからずショックは受けたけど、会えるならそれでいいと思った。
 
 
入学式はすぐに終わって、友達も出来た。
 
 
あとは蓮二を見つけられれば・・・。
 
 
 
「椿!椿はどこか部活見に行くの?」
 
 
「あ、うん。テニス部に行こうかなって思って」
 
 
「テニスやってたの?」
 
 
「小学校まではね。でも下手くそで・・・やめちゃった。
 
だから、男子テニス部のマネージャーになろうかなって思って」
 
 
 
男テニのマネージャーになれば、蓮二に近付けるのは決定的だった。
 
貞治といい勝負になったほど蓮二もテニスが上手いなら、
 
きっと高校でも続けるはずだからだ。

友達の都は吹奏楽部に行くらしいので、教室で別れた。

テニス部に行くことにしたのはいいが、完全に迷ってしまった。

 
青学も広かったけど、立海も十分広い。

 
まだ慣れない固いブレザーを気にしつつ、走り回る。

 
 
 
すると、前方に見慣れた銀色の髪の男が見えた。

 
 
 
あたしはそいつを大声で呼ぶ。

 
 
 
「雅治!」

 
 
 
そいつは振り向いてすぐに、まずいという顔をした。
 
逃げようとするところを、あたしは腕を掴んで阻止する。

 
 
 
 
 
「・・・雅治・・・なんで立海だって言ってくれなかったの!!」
 
 
「プリッ・・・あ、ああ、すまん。謝るから大声出さんでくれ」
 
 
こいつが従兄弟の仁王雅治だ。
 
 
ずっと神奈川に住んでいるのに、意味のわからない方言を喋る男だ。

 
「絶対怪しいと思ってた!雅治の部屋に立海の制服があるの見たもん!
 
ああもう、雅治が立海のテニス部だって早くわかってれば
 
もっともっともっーと早く蓮二に…」

 
「あ。椿、あっち向いてみんしゃい」

 
「なに!その手には乗らないからね!聞いてる?雅治がもっと早く蓮二と同じ学校って・・・」
 
 
 
あたしはただただ怒っていた。
 
 
 
 
こいつが早く立海だということを知っていれば――――
 
 
 
 
 
 
 
 
 
「椿」
 
 
 
 
 
 
 
 
 
不意に雅治の声とは違う、もっと優しい落ち着いた声があたしの名前を呼んだ。
 
 
 
 
あたしは雅治の胸ぐらを掴んだまま、ゆっくりとその声の方に振り向く。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
そこにいたのは・・・。

 
 
 
 
 
 
 
 
 
「蓮・・・二・・・?」

 
 
 
 
 
 
 
 
 
春の青空に舞う桜がよく似合う、きれいな立ち姿。
 
切り揃えられた髪の毛。
 
細い目。

 
 
 
 
 
 
 
その姿は、紛れもなくあたしが探していた柳蓮二。

 
 
 
 
 
 
 
 
「久方ぶりだな・・・椿」

 
 
 
 
 
 
 
あたしが知っている柳蓮二の
 
 
4年と、11ヶ月と、7日たった姿だった。




 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
リフレイン

同じ部分を繰り返すこと。


 
 
 
僕らは新たに

その出会いを

繰り返す。

 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
――続く
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
いやあ、やっと蓮二が書けた!
ずっと書きたかったんですよね、幼馴染3人の話。
もともとこれもBLで書こうとしていたネタでした。
だけど、ドリームで蓮二がないことに気づいたので!
この『リフレイン』っていう題名、かなり気に入ってます笑
本当はリフレインと同じ意味の『ルフラン』にしようと思ったのですが、
なんとなく『リフレイン』の方がきれいかなあと思ったので。
 
蓮二と椿さんの関係も気になりますが
乾が頻繁に出る意味と、仁王が従兄弟であることにも
ちゃんと意味があります!笑
特に仁王と椿さんは一つ屋根の下。
危うく仁王夢になってしまいそうですねw
ならないように気をつけます!
 
あと、椿さんに「ハゲに悪い人はいない」と教えたのは
仁王雅治です。笑
 
それでは、今後もよろしくお願いします!
 
 
08.11.1 良唯
 
 



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