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hit(カイ→レン←ガク)


ここは、青の国。
他の国に比べ、圧倒的に若い王様が守っている小さな国。
しかし若いからといって、未熟なわけではない。
産業、政治、外交、何においても先代より安定した策を取っている。
そのため小さい国ながらも、他の列強と劣らずに凛としているのだ。


そして、そんな青の国の召使である俺は、なかなか幸せ者であると、最近ふと考えている。
ただ、あいつだけを除けば。


「レーン」

リンがこちらに駆け寄ってくる。
肩を上下に揺らし、額の汗を拭っていることから、相当全速力で走ってきたのだろう。
リンがこんなに必死になって俺のもとに来る理由といえば、一つしか思いつかない。

「また?」
「まあね。レンも気に入られたもんよね」

じゃ、頑張ってと、リンは手を振って去っていく。
俺はそんなリンに他人事だと思って、と、ため息をついた。
それから俺はリンとは逆方向へ進む。
この先の突き当たりに、装飾が施された大きな扉がある。
その先が、俺を呼んでいる主のいる場所。

コンコンと軽快な音を鳴らせば、はーいと応える声が聞こえた。

「失礼します」

丁寧に一礼をして入室する。
大きな窓の前のこれまた豪華に彩られた机とイスに腰かける一人の男。
これがこの国の王様の、カイトである。

「あ、レン、待ってたよ」
「はい、で、用件は?」

ひらひらと手を振られたが、それには華麗に無視を決め込み、営業スマイルを張り付けて事務的な言葉を投げかける。
そうすれば、いつものことながらカイトは眉を顰め、用件なんてないよと言った。

用件なんてない?
ふざけんなよ、これ何回目だよ言ってみろ。
通算して21回目だよ。
ちゃんと数えてるなんて、すげえだろ。
とにかく21回も無駄足踏んだ俺の身になれ。

と、決して口には出さないが、オーラで伝える。
すると、それを何となく感じ取ったようで、カイトはあちらこちら目を泳がせ始めた。

「じゃあ、僕持ち場に戻りますね?」

それだけ言って、入ってきた扉のドアノブに手をかける。
すると、焦った様子でカイトはティーセットを引っ張り出した。

「え、えっと!!唯一用件になるなら、一緒にお茶がしたくて。いい茶葉が入ったし、今日のおやつのガトーショコラと一緒にさ?それともやっぱり戻っちゃう?」

ガトーショコラ…。

ごくりと喉が鳴る。
はっきり言おう。
この宮廷のおやつは、本当に、めちゃくちゃ、とっても美味い。
ときどきカイトがくれるのだが、これがまた甘党の俺にはドストライクな味なのだ。

「し」

ギロッとカイトを睨む。
するとカイトは人当たりのいい笑顔をこっちに振りまいた。

「仕方ないから、食べてあげますよ!」


くそ、また勝てなかった!!





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あきゅろす。
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