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すれ違い4
連れてこられたのは一階渡り廊下の奥にある中庭。
緊張した面持ちのクラスメートが、あの、と切り出すのには少し時間がかかった。

「もうなんとなく分かってるかもしれないけど、あたしカイトのこと好きなの」

ぎゅっと握られた拳が、思いの丈を表しているようで、ごめんねとしか答えられない自分が少し嫌になる。
きっと何回も告白の練習した。
何回も止めようって諦めた。
でも、その度に頑張れって自分を励ましたのだろう。

そんなに、僕のことを思ってくれる子にもしも何か返せるとしたら、いったいなんなのだろう?

「ありがとう、すごく気持ち嬉しいよ」

俯いていた女の子の顔が上がる。

「でも、気持ちには応えられない。本当にごめんね」

途端、泣きそうに歪む顔に申し訳なくなる。
小さくもう一度ごめんねとつぶやいた声は、彼女には届いたのだろうか。

それから少しの間の沈黙。
どうやってこの場を締めればいいのか悩んでいると、女の子が言葉を紡いだ。

「お願いがあるの」

泣くのを我慢しているような、掠れた声だった。

「最後に、抱きしめて下さい。そしたら、ちゃんと諦めるから」

断れるわけがなかった。
告白するのにどれほど勇気がいるか、それは僕が一番わかってる。
実際、今日、そして今も、俺は緊張している。
ずっと好きだった相手に告白するんだから。
すごく、すごく、自問自答を繰り返して、思いを吐き出してくれた彼女。
そんな彼女の願いを聞き入れられないわけがなかった。

「分かった」

言うと、ほっとしたように笑う彼女。

「ありがと」

小さく聞こえた声。
出来るだけ優しく胸の中へ誘うと、彼女はすっぽりと僕の中におさまった。
温かい。
だけど、やっぱりこれは僕が欲しい体温じゃないんだよな。
そんなことをぼんやりと考えていた。








あきゅろす。
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