すれ違い3
◆
決戦当日。
『ずっとレン君のこと好きだったんだ、良ければ付き合ってください』
心の中で何度も予行練習した言葉。
大丈夫、言える。
逃げたくて仕方ないけど、逃げてもどうにもならない。
約束の時間まであと30分。
「もうそろそろ、行こうかな」
待ち合わせた場所はもう使われていない錆びれた裏門の前。
誰も来ることはない静かなその場所なら、何も不安に思うことなく伝えられると思った。
よし、と自分に気合いを入れて教室から出ようとする。
と、突然腕を掴まれた。
「あの、ちょっといいかな?」
「え?」
俺の腕を拘束しているのは、クラスメートの女の子だった。
「えっと、これから僕…」
「伝えたいことが、あるの。少しだけでいいから」
どうしようと下に視線を向けた時、僕の腕を掴む手が震えていることに気が付く。
すごく、緊張してるんだ。
気付いたら、なんとかして応えてあげなきゃと思った。
大丈夫、まだ30分もある。
いつものように15分で終わったとしても、まだ15分もあるんだから。
「分かった。行こう」
◆
バクバクバクバク
なんで緊張してんだろ、俺。
さっきから心臓がうるさい。
「もうすぐ?」
「う、うん」
「行ってらっしゃい」
ミクオが背中を軽く叩く。
頑張れよと応援してくれているのだろう。
こいつってほんと、優しいんだか優しくないんだか分からない奴だ。
でも、この励ましは今の俺にとってはすごくありがたかった。
行ってくる、とミクオと別れて、当てもなく廊下を歩く。
もうすぐと言っても、時間はあと30分もある。
どうしようかな…。
戸惑って意味もなく右往左往していると、そうだと思いついた。
落ち着かないし、自販機に行ってジュースでも買おう。
そうと決まったらすぐ行動。
足早に、俺は一階の渡り廊下にある自販機へ向かった。
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