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PSYREN夢
気まぐれに賭けたもの/ウラヌス



驚かすつもりも声をかけるつもりもなく、何の用もなしに、ただ静かに隣に腰掛ける。

「…何の用だ」
もちろんそう聞かれた。

「暇」

彼はため息をついた。

「俺のところに来てどうする」

「ウラヌスも同じかなと思ったから、一緒に退屈を楽しもうかと思って」

「……俺が何も感じないと知ってて言ってるのか」

ウラヌスは機嫌悪そうに私を睨んだ。

「…あんたさ、感情あるって」

「勝手に言っていろ」

「だって今怒ってるじゃん」

「そう見えれば真似事だ」

「………真似事…。」

ふてくされる彼を「可愛い」と言ったら氷漬けにされるに違いない。

「…じゃあ怒ってないの?」

「…ああ」

「ほんとかなぁ」

「……」

茶化そうとするとまた睨む。


「はー…。退屈たいくつタイクツー。……ほらあんたも一緒に、せーの、たいく「昔はどうだった?」

「へ?」

無視されるだけと思ったら彼は何か呟いた。

「…あの世界で、こういう時人間は何をして気を紛らわす?」

「あー、…好きな事やるね。楽しい事とか」

「例えば?」

「そうだねー……好きな音楽聴いたり本読んだり…あと友人に電話したり会いに行ったり…するのかなぁ?とにかく人それぞれ違う、自分が楽しいと思う事をする」

「……やはり俺にはわからないな。この世界だから俺は生きているんだろうな…」

「闘う事は楽しい?」

「さぁ……お前は好きなのか?」

「別に特別好きっていうわけじゃないけど」

「じゃあ、お前は何のために生きてるんだ」

「理由がなきゃ生きちゃいけない?」

「理由がないなら生きていたって意味がないんじゃないのか」

「そんな事はないと思うけど…でもそしたらあんただって同じじゃんよ」

「…俺は…闘うことで生きている」

「………なんか、よくわからん」
頭がごちゃごちゃしてきた。めんどくさい。

「死なない限り生きてるんだよ生き物は。私もウラヌスも…」

生きる理由は考えると虚しいだけ
昔それを気が遠くなるほど感じた。

「――いつかは死ぬ。俺もお前も…」

その声が彼にしてはめずらしく穏やかで、この瞬間が少し、私にとって大切なものに感じた。

「…あんたが死んだら、私は悲しい」

それに引きかえ、続いた私は少し泣きそうな情けない声で呟いた。

「……何故だ」

「何故って…寂しいじゃん。」

「…そうなのか?」

「うん。」

いなくなる。二度と会えないとわかるとそこは空になる。存在は消えて、いずれ忘れられる。誰の記憶にもなくなれば無になる。


「ウラヌスは私が死んでも何とも思ってくれないの?」

「さぁ…その時が来ないとわからないな」

「えー」

嘘くらい言ってくれてもいいのになぁ

「でも、死ぬとしたら俺のほうが先だろう」

「そうかなぁ」

「俺のほうが戦線に近い」

「……そっか。」

「だから俺は、お前が死ぬ事を考える必要なんかない」

本人には何気ないその台詞に突き放されたような気がした。

「…それってなんかずるい」
「何で」
ウラヌスはめんどくさそうな顔をした。


「ずるい。ウラヌス私より後に死ね」

「それは無理な話だな」

「じゃあ賭けよう。どっちが先に死ぬか」

「俺のが先に決まってるだろう」

「私が勝ったらね、えーっと…何賭けようかな」

「…お前、勝ったら死んでるんじゃないのか」

「あ、そうか…」

少し沈黙。

「まぁ、勝ったなら勝ったんだから、あの世で喜べばいいんじゃない?」

彼は少し黙ってから私の顔を見た。

「……俺が勝って、あの世で喜んでいる時…お前は泣いているのか?」

視線がぶつかって、私からすぐそらした。

「そうだね」

「……だったら、泣かないと約束しろ」

「え?」

「俺が勝ったら、お前は泣くな。」

「そんなの、無理かもよ?」

「無理なら尚いい。賭けなんだから無理もありだろう。元々お前が言い出したんじゃないか」

「なんで泣いちゃいけないの。嬉しくないの?」

「それは俺のせいになるんだろ。…面倒くさい」

「喜べばいいのに」

「そんな感情持ち合わせていない」

「…ふーん」


それなら私は望もう


「じゃあ、私が勝ったら
私のために泣いて。」


喜ばせるための涙なんていらないけど


「…俺が泣く?お前のために?」
ウラヌスが驚いた表情で言った。

「そ。」

「………知らないものはできない」

「無理もありなんでしょ?」


どうせ私よりウラヌスが先に死んじゃうんだ

そのくらい夢見たっていいよね


立ち上がる私をウラヌスは見上げた。

「どこに行く」

「お散歩。ウラヌスも行く?」

「…ああ。」

「あら?めずらしい」

「……暇なんだ」



目的も見つけにくい世界だけど

お互いその時が来るまで生きよう




end.

―――――――――――――


またもや名前変換なしです(^q^)




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あきゅろす。
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