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PSYREN夢
縁/グラナ


いつだって探していた
俺の居場所
取り戻したい
取り戻す?
失ったものじゃない
始めからないんだ
造られて生まれた俺に在るのはこの力だけ
普通じゃない、違う生き物
俺は独りで、一人だけ。
普通の奴らを真似ても得られるのは虚無感
俺は、寂しい。

居場所のない俺が、少しだけ世話になった女がいた。
普通の人間だったが、そいつも独りだったらしい。

そいつは独りでも、困ってないように見えた。
趣味を持ち楽しみは在る
大抵の事は一人でこなせる
一人でも人生は充実していて
楽しそうで、羨ましい

それでも、感情のある瞳は哀しげだった。
たまに見せる笑顔が好きだった。
そいつと一緒にいると、唯一人間らしい関係で居られた。



あれから何年経ったか

縁があればまた会おうという感じで
お互いが居場所として在ろうという関係として
あいつと俺は自然に別れた。

あいつのそばで時を止めていてもいいと思ったけど
危険に巻き込む可能性もあったし
あいつから学んだ事はたくさんあって
世界は広いということを知ったから
俺は人間として、世界を見たいと思った。


そして時は流れて、弥勒と出会い、奴の言う世界に興味を持った。



明日は、転生の日
あいつはどうしているだろう
禁人種にされるくらいなら死んだほうがマシだ
だから、下手に生き残ることなく、できるだけあっという間に死んでほしい
それが俺の考えうる中で一番マシな結末


さようなら、でも
元気でな、でもない
不思議な挨拶を感じたが
言い表す言葉が見つからなくて
何も言わないまま、俺たちの居た世界はひっくり返った。










いつの間にか眠ってしまっていた昼下がり
起き上がりぼーっとしたまま草村に座っていると、背後にさくさくと足音が聞こえた。

「おはよ」

寝ぼけ眼に、水色のワンピースが風で草と揺れていた。

「ん、…メシの時間か?」

「何寝ぼけてんの。もうすぐおやつの時間ではあるけど?」

「…ふぁ〜…。どうしたんだ?」

「いや、そろそろ起きる頃かなと思って」

「……あぁ、そうだな」


俺が寝てると、いつも起こさずにそばにいる。
起きた時、当たり前のようにそばにいる。
あの頃から変わらない、ただ、今は確実になったもの。


ここは歪み空間の中で生きる小さな火山島。


自分と同じように特異な能力を持つ者たちと
それらと何らか縁ある普通の人間たちが共に生きる場所

俺のそばには、俺が呼んだ縁ある者がいる。

「どうしたの?ぼーっとして。夢でも見た?」

「…ああ…忘れたけど、あんま良くない夢だな。お前もいた気がする」

「なにそれ失礼しちゃう。ま、夢で良かったじゃん」

そう言って名前はやわらかく笑った。
この地で初めて見せるようになったそれを見るたびに、俺は彼女をここへ連れてきて良かったと思う。


それは未来の裂け目でも過去の分かれ目でもなく、
紡いでいくたった今に存在する奇跡。




end.


11.09.24


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