PSYREN夢 哀殻/遊坂 路地を歩いていたら、複数の男たちが後ろから近寄ってきた。 私がすぐに劣種と見なしたそれらは、気持ちの悪い笑い声で何か言いながら私を取り囲むようにして 一人が肩に触れようとしたから殺そうとしたら どれとも違う腕が肩に回ってきた。 「俺の彼女だから」 雑魚でもその男の何かを感じとれたのか、それらは半ば恐れ逃げるように向こうへ消えていった。 「お嬢さんこんな夜中に歓楽街での一人歩きはキケンだぜ」 「…殺しそこねた…つか彼女じゃないし」 「きっと向こうで死んでるさ。あっちの通りにホテルたくさんあったけどどのコースで行く?」 「…何の用?」 「……わかってんだろ」 ビルの壁際にゆっくりと追い詰められる。 「裏切り者」 そう言って闇の中で微笑む彼が妙に艶めいていて一瞬見惚れる。 「へぇ…あんたに殺されるんだ…私。」 「お前は俺よりお利口だと思ってたけどな。反抗期か?」 「……めんどくさくなった。不謹慎だけど、弥勒たちが羨ましい。…感情なんて無ければよかった」 「在りそうだけどな、あいつら」 「……あんたは、この先に希望とか、楽しみとか、そういうもの感じてる?」 「希望?俺は殺せりゃそれでいい」 「そっか…そうだね、あんたは」 「まぁ別に、あいつらの考えてる未来に興味はねぇけどな」 「……だったら…」 言いかけて止まる。頬に暖かいものが零れた。 「…?」 恐くも悲しくもないのに涙が出た。 遊坂がそれを黙って見てることに気づいて、情けでも見せたのかと思う。それとも、次唾を飲み込んだ瞬間、発症するだろうか。 俯いたままよくわからない感情に捕われていると、遊坂が私の頬に触れてきて、指でそっと涙を拭った。 「俺には、あいつらよりお前の方が空っぽに見えるぜ」 遊坂の手は温かい 比べて私は身体の芯まで冷えきっているみたい 人形のようだ 私はいつから人形だったのか 考えるのも馬鹿らしい 「あんたも、多分長生きしないよ」 「ハ…まぁ気ままにやるさ。だったら気長に待ってろよ」 「……うん……いいよ。」 鈍く点滅を繰り返す壊れかけた街灯が次に照らし出した影は、一瞬の飛沫の後ぐらりと崩れ落ちた。 その瞬間逝くまでの僅か、彼の表情が哀しく見えた気がしたのは、 見間違いだとしても役得だと思って、私は微笑んだ。 end. ―――――――― 名前変換なしでした 11.02.12 [*前へ][次へ#] [戻る] |