PSYREN夢 曇り時々温もり/ウラヌス 「さーんご」 「!」 名前はいきなりやって来ては、よく俺に抱き着いてくる。 何故かなかなか慣れないそれに内心いつも驚いてしまう自分。 「何の用だ」 「いや、可愛いからさ」 「…可愛いって、俺が男とわかって言ってるのか?」 「当たり前でしょー。男にも可愛さは必要よ。男の可愛さは女の子には堪らない感覚的なものがあるのよ。わからないと思うけど、私には01号だって可愛いから」 「……」 「でも私のツボは03号だよ。03号が一番可愛い」 「……」 「あ、私の言う"可愛い"はね、"かっこいい"を前提にしたものだから女々しさとかと違うから。…だから眉間にしわ寄せるのやめてよ。可愛いけどさ」 「……」 それから01号の姿を見つける度に、名前の言葉を思い出してしまう。 「ん、何だ03号」 「…………いや」 「さんごぉぉぉおおお」 「!」 そこに俺を見つけた名前がまた抱き着いてくる。 「あ、よっいちごー」 「よぉ」 「……俺にはわからん可愛さが…」 「は?」 「え?あー、いやそれがねー、見た目ごつい男前だけどその中にちゃんと持ってるのよ彼は。でも男にはわからないほうがいいと思う。無理しないで、というかわからなくていい。問題になるから」 「…何の話だ?」 「気にしないで01号。今日はいい天気だね!!」 「…曇ってるぞ」 自分がW.I.S.Eとして在る日々から身近な存在になっていた名前は、俺にとって不思議な存在だった。心を持つとああなるのか、それとも名前だからああなのか、何だか俺にはよくわからない言動ばかりする。 弥勒のところへ向かおうと待ち合わせた場所に見つけた名前の姿。 「おい」 「…ぅ、…ぉ…くそー…」 見ると携帯用のゲームに夢中な様子で、俺には気づいていないらしい。 「……」 ふと思った。こういう時、逆の立場なら名前は絶対に抱き着いてくる。 それは気付いていない俺を驚かすためか、それとも抱き着くことを前提にやって来るのか。 名前はやたら俺にばかり抱き着く。理由は主に「可愛いから」 可愛いと抱き着くのか?いや、抱き着く、という行為は大体が好きな相手に対するものだ。名前は俺が好きだから抱き着くのか? …何だか面倒くさくなってきたが、俺が言いたいのは、俺から抱き着いたらどうなのか、ということだ。 俺にとって名前は、可愛くないわけではないし嫌いなわけでもない。そんな気がする。 「―――、」 後ろから軽く抱きしめてみた。 名前は驚いて手を止め、見上げてやっと俺だと気付いたようだ。 「…え、さんご…!?」 何だか違う。そう思いながら、俺はすぐ離れて隣に座った。 「お前の真似をしてみた。ただの気まぐれだ」 「……」 彼女は何も言わずに瞬きを繰り返していたが、手元のゲーム画面に気付き、やっと「ぁ」と声を出した。そこには『GAME OVER』の文字。 「………俺のせいか?」 「………03号……」 単純にこれは怒られるのだろうと思ったが、名前は勢いよく抱き着いてきた。いつもより近距離からだから後ろに倒れそうになる。 「やっぱあんた可愛い…!!可愛すぎるから抱きしめていい?」 「……苦しい。」 いつからだろう 鬱陶しいだけだったものが暖かくなってきたのは 名前が俺の空っぽの部分に入り込んできて、何かが少しでも満ちてきた気がするのは 彼女に任せて、少し流れてみるのもいいかもしれない。 end. ―――――――――――― 03号←何て読んでます? やっぱ「ぜろさんごう」が多いのかな 私は「さんごう」で読んでるので、ここではさんごー呼びになってます 11.02.11 [*前へ][次へ#] [戻る] |